今年は、ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクールが創設されてからちょうど五十周年です。クライバーン財団は、それを記念するコンサート・シリーズ(アマチュア・コンクールの入賞者たちを集めたコンサートも少し前に開催されました)などさまざまなイベントを企画・運営していますが、そのなかでも目玉のひとつである、ドキュメンタリー映画、『The Cliburn: 50 Years of Gold』が先日アメリカの公共テレビ局PBSで放映されました。そして、こちらのサイトで無料で映画まるごと見られるようにもなりました。
クライバーン・コンクールでは、四年に一度のコンクールのたびに、そのコンクールを追ったドキュメンタリー映画を制作していて、それぞれ面白いのですが、それらの映画では各コンクールについての映画という性質上、物語のは「誰が優勝するか」ということに焦点が当たりがち。それに対して、今回の映画は、1958年にクライバーンがチャイコフスキー・コンクールで優勝したことの歴史的意義、そして彼の功績を記念して設立されたクライバーン・コンクールをイベントとして育て上げたフォート・ワースの地域コミュニティのありかた、そしてコンクールに出場したり入賞したりすることで若いピアニストたちが演奏家としてのキャリアに巣だっていったか、ということのほうに重点が置かれていて、私が『ヴァンクライバーン 国際ピアノコンクール』で伝えようとしたこととよく重なっています。もちろん、2009年のコンクールの様子もあちこちに出てくる(28:45あたりで、辻井さんの後ろに立っている私の姿もちょびっと見えます)し、クライバーン・コンクールの顔となったホゼ・フェガーリ(この夏のPianoTexasで私がマスタークラスを受けた人です)やジョン・ナカマツ、オルガ・カーンなどのインタビューも沢山あって、楽しめます。そして、クライバーン氏自身が1958年のことを振り返るシーンなどもとてもよい。いろんなことを考えさせられる映画です。
前にもこのブログで言及したとおり、クライバーン氏は末期がんと診断され、現在は自宅でホスピスケアを受けているとのこと。来年のコンクールでは姿が見られないかもしれませんが、このドキュメンタリーが彼の存命中に放送されてよかった。
民主党全国大会もいよいよ終盤、まもなくオバマ大統領自身の演説があります。昨日のクリントン元大統領の良識あるスピーチもたいへんよく、「元大統領たるもの、こうでなくっちゃあ」と思わせてくれるものでしたが、ミッシェル・オバマやクリントン、そしてエリザベス・ウォーレンの華々しいスピーチが注目を浴びるなかで、日本では話題になっているとはまず思えないながらも私がよいと思うものをひとつここで紹介しておきます。
私が大学院時代に6年間を過ごしたロードアイランド州の現知事、リンカーン・チェイフィー氏。彼は長年共和党員として政治活動を続けていましたが、ブッシュ政権の経済政策や環境政策に納得できず共和党を離れ、現在では全国で唯一、無所属として州知事をつとめているという人です。彼のスピーチ、けっして派手ではないけれど、現在の共和党が彼が考えるところの「保守」の理念からどれほどかけ離れたものになってしまっているかを明確に語っていて、説得力があります。元ロードアイランド州の住民としても、このスピーチには拍手。是非ごらんください。文章はこちらで読めます。
ところで、先日ミッシェル・オバマのドレスが素敵と書きましたが、やはりこのドレスはあちこちで話題になっており、私は思わずデザイナーをチェックしてしまいました。Tracy Reeseというアフリカ系アメリカ人のデザイナーの作品で、このドレス自体はまだ商品化されていないものの、このデザイナーのドレスは大体400ドル前後とのこと。私のような人間には決して安くはないけれど、ファーストレディが党全国大会で着るドレスとしてはたいへんリーズナブルな値段ではないですか。それに対して、ロムニー夫人のドレスは1990ドルだったらしい。ふむむ。
今日からノースカロライナ州シャーロットで民主党全国大会。先日の共和党全国大会では、クリント・イーストウッドの変てこりんなスピーチが話題をさらっていましたが(本当に変だった)、民主党にかんしては、2008年の大会のときの勢いに匹敵する盛り上がりを生み出せるかが課題。大会はまだこれから数日間続きますが、初日の今日、ミシェル・オバマがしたスピーチがたいへん素晴らしい。大統領夫人としてのミシェル・オバマの成果には賛否両論あり、弁護士としての経験を土台にもっと積極的に政治にかかわることもできるのに、あえて母親としての役割に徹していることを批判的にみる人たちもいます。そういう見方にも多少同意する部分はあるのですが、それはそうとして、今日のスピーチは是非とも見るまたは読むかしていただきたい。自分自身そしてオバマ大統領の生い立ちを、アメリカ人口全体のなかに位置づけ、歴史を振り返りながら、揺るがぬ希望と絶え間ない努力によって壁を乗り越えていく信念こそを「アメリカらしさ」ととらえ、自分たちの娘そして次世代すべてによりよい世の中を残すために、オバマ大統領そして我々がすべきことはなにかと語りかける。パーソナルな語り口でありながら、大きく重要な問題に正面から向き合うこのスピーチ、それこそ見ているほうに希望を与えてくれます。ちなみにドレスも素敵。(以下にペーストするビデオは、もしかするとアメリカの外では閲覧できないかもしれませんが、他のソースでもビデオはあるはず。現時点ではYouTubeではスピーチがまるごと入ったものはないようなので、あしからず。ただしスピーチの文章はここで読めます。)
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