2012年2月4日土曜日

おひとりさまは社交的

今週のニューヨーク・タイムズの日曜版(こちらはまだ土曜日の朝ですが、オンラインだと日曜版は日曜以前に見られる)で目を引いたのが、現代アメリカの一人暮らしについての記事。経済が発展し都市化が進むと一人暮らしという生活形態を選ぶ人が増えるというのは世界共通の現象で、現在一人暮らしの割合がもっとも急速に増えているのが、中国、インド、そしてブラジル。アメリカでも、一人暮らしの多さは今が史上最高で、とくにマンハッタンやワシントンDCなどでは半数近くの世帯が一人暮らしとなっている。不況のなか、定職を手に入れられない若者が実家に戻って親と一緒に暮らしたり、離婚を決めた夫婦が経済的理由で別居を延期したり、といったこともなくはないけれども、全体的にみれば、不況によって一人暮らしが減ったということはほとんどなく、経済的な不便を我慢してでも独居生活の自立性を楽しむ人が多い。けれども、世界的に見ればアメリカの一人暮らしの割合は意外に低い。スエーデン、ノルウェーの北欧二国を筆頭に、ドイツ、オランダ、イギリス、フランスといったヨーロッパ諸国のほうがアメリカよりも一人暮らしの割合が高く、日本もそのすぐ後ろにつけている。『ドット・コム・ラヴァーズ』でも書いたように、アメリカでは「家族」のもつ意味合いが強いので、この統計にはとくに驚きませんが、ここで取り上げられているのは、その一人暮らしの人たちの生活ぶり。


この記事によると、一人暮らしは孤独というイメージはまるで時代錯誤で、都市文化とコミュニケーション技術などにより、一人暮らしの生活は自由と刺激に満ちたきわめて魅力的なものになっている、とのこと。そして、さまざまな調査によると、家族持ちの人よりも一人暮らしの人のほうが、友達や近所の人たちとのつきあいや外出が多く、全般的に社交的である、とのこと。それはまあ、配偶者の都合に合わせたり子供の面倒をみたりする必要がない一人暮らしは、自由になる時間が多いのだから、それはまあ当たり前だろうとは思いますが、ここで面白いのが、インターネット・メディアの役割。インターネットや携帯電話が人々の社交生活にもつ役割についての2008年の調査によると、インターネットは人との触れ合いを減らすどころか増やす結果になっている、とのこと。部屋でひたすらコンピューター画面に向かって黙々とネットサーフィンをしているような人は、友達のいないオタク的な人かと思いきやそうではなく、ネットをたくさん使う人ほど、幅広く多様な社交ネットワークをもち、公園やカフェやレストランに頻繁に出かけ、さまざまな視点や価値観をもった人々とつきあいがある、とのこと。


フムフム、そう言われると、ネットに使う時間が多すぎると日頃感じている私の罪悪感も少し和らぐ気持ちがしますが、これと関連して、今日のニューヨーク・タイムズで大きく取り上げられているもうひとつのが、シェリル・サンドバーグについての記事。シェリル・サンドバーグは、マーク・ザッカーバーグの右腕としてフェースブックのCOOを務めている、まさに時の人。2011年のフォーブズ誌の「現在もっとも影響力のある世界の女性100人」のリストでも、第5位に選ばれています。ハーバード在学中にローレンス・サマーズ(『現代アメリカのキーワード』をご参考に:))に可愛がられ、世界銀行の経済研究員となった後、シリコン・ヴァレーに移りグーグルを経てフェースブックの経営首脳陣に入ったという人物です。フェースブックの株が公開されることで彼女の資産そして影響力が巨大に膨らむことが予想され、今週さらなる注目を浴びていますが、そんなこともさることながら、彼女は、ビジネスの世界、とくに男性中心で知られるIT産業でより多くの女性が活躍するよう、さまざまな場所で講演をしたり後輩を支援したりして、経済界の女性のロールモデルとしてとくに若い世代の憧れの的となっています。


サンドバーグ自身もとても面白いのですが(昨年7月の「ニューヨーカー」に、彼女についてのとても興味深い長文記事がありますのでぜひどうぞ)、それはともかくとして、おひとりさまについての記事との関連で面白いのが、フェースブックをはじめとするSNSの利用者としての女性の位置づけ。サンドバーグについての記事によると、フェースブックで、近況アップデート、メッセージ、コメントなどといった機能の62パーセントは女性が使っている。平均するとフェースブックの利用者は女性のほうが男性よりも「友達」が多く、フェースブックに使う時間も多い。初期の頃は、女性のほうがフェースブックに写真をアップロードしたり「グループ」に参加したりウオールに投稿したりする割合が高かった、とのこと。女性のほうが男性よりも人とのつながりを重視する、というデータはいろいろな研究で出ていますが、フェースブックにもそういう傾向が表れるのかというのはなかなか興味深く、ニューメディアの利用者としてだけでなく、ニューメディアを開発したり運営したりする側にも、女性の役割が大きくなってくるのかもしれません。


しかし、このブログを書くためにあちこちネットサーフィンをして、私の本日のネット時間はかなり使ってしまったので、そろそろ別の活動に移ります。