2022年10月28日金曜日

『親愛なるレニー レナード・バーンスタインと戦後日本の物語』発売!

 拙著『親愛なるレニー レナード・バーンスタインと戦後日本の物語』が本日10月28日、ついに発売になりました!

これは、3年前に英語でオックスフォード大学出版から刊行された、Dearest Lenny: Letters from Japan and the Making of the World Maestro を私が自ら日本語の読者にむけて書き直したものです。

指揮者、作曲家、ピアニスト、教育者、メディア・パーソナリティ、社会活動家など、ジャンルを超えて類をみない活躍をした、20世紀アメリカを代表する巨匠、レナード・バーンスタイン。そのバーンスタインが何十年にもわたって深い親交をもった、知られざるふたりの日本人がいます。ふたりがバーンスタインとのあいだに育んだかけがえない愛情の物語を語りながら、それぞれの関係を可能にした歴史・政治・経済・社会的文脈とその変化をたどる本です。冷戦期アメリカの文化外交と日米関係、政治と芸術の複雑な関係、アメリカ芸術産業の変化と日本の音楽業界の発展、家族と性など、構造やイデオロギーが絡み合うなかで、遠く離れた場所からバーンスタインを芸術家として、またひとりの人間として愛し続けた「カズコ」と「クニ」。数々の手紙にしたためられた言葉から、ふたりの人間性と変化する愛情の形が感じられ、また、ふたりの目や耳や心をとおして、バーンスタインが「世界のマエストロ」となっていった過程が浮き彫りになります。

ワシントンの議会図書館でリサーチ中に思いがけずふたりの手紙を発見してから、この日本語版の刊行に至るまで、ほぼ10年。そのあいだに、想像もしなかった数々の出会いがありました。研究者として、物書きとして、そしてなにより人間として、とても多くのことを学ぶ道程でした。

日本語版では、日本の読者にわかりやすいように、原著の一部を削除したり、日本語の資料を使って加筆したり、話の順序を少し入れ替えたりしてあります。英語の原書でも、研究者だけでなく多くの一般読者に読んでもらえるような文章展開を心がけましたが、今回の日本語版では物語性にいっそう注力し、頭にも心にも響く本ができあがったと思っています。

装丁・デザインも、本のエッセンスをつかんだ、温かく素敵な仕上がりになりました。

ひとりでも多くのかたに読んでいただけたら嬉しいです。

原稿を読んで感動してくださったかたたちのご協力で、、刊行記念イベントがいくつか企画されています。

第一弾は、11月12日(土)、大阪の谷町六丁目の隆祥館書店でのリモート・リアルトークイベント(私はハワイからリモート登場です)。私は夏の帰国時に隆祥館書店を訪れ、思わずほっとするような佇まいのお店の品揃えとそこに現れる店長の二村和子さんの精神に心を打たれました。こ隆祥館書店でローンチイベントをさせていただけるのはほんとうに光栄です。(大阪圏外のかたでも、本を隆祥館書店でご注文いただけます。)

第二弾は、その翌日の11月13日(日)、以前もオンラインセミナーをさせていただいたコーラスカンパニーの主催で、「吉原真里が語る『私が書いた3冊の音楽の本』〜アメリカ研究から見たクラシック音楽とは?」というオンラインセミナー。タイトルの通り、『親愛なるレニー』の内容紹介だけでなく、私がこの本と同じくアルテスパブリッシングから刊行した『ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクール 市民が育む芸術イヴェント』『「アジア人」はいかにしてクラシック音楽家になったのか? 人種・ジェンダー・文化資本』もあわせて語ってしまおうという試みです。私の著書をすでにお読みになっているかたには、ぜひ質問やコメントをいただきたいですし、未読のかたには、私がどんな研究や執筆をしてきたのかを知っていただく絶好のチャンスです。たいへんお得な料金設定にもなっていますので、ふるってご参加ください。

第三弾は、12月11日(日)、朝日カルチャーセンター新宿教室主催で、『親愛なるレニー』の内容を紹介するオンライン講座を開催します。この頃までには本を読んでいただいているかたも多いかと思うので(と期待:))、参加者のみなさんからの感想や質問に応えながら語る講座にしたいと思っています。

愛に溢れるバーンスタインの生涯と功績、「カズコ」と「クニ」の人間性、そして20世紀のアメリカ・日本・世界。そうしたものを感じ取っていただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。




2022年6月16日木曜日

『私たちが声を上げるとき アメリカを変えた10の問い』本日発売!

 昨日、無事入国を果たし、3年ぶりに東京の土を踏みました。今回の帰国のおもな目的は、本日正式発売になった『私たちが声を上げるとき アメリカを変えた10の問い』集英社新書)を手に取り、共著者仲間と編集者と共にプロモーションに励むことにあります。

この本は、現代アメリカにおいてさまざまな不条理や不正義に果敢に声を上げてきた「女性」(カギ括弧をつける意味は、本を読んでいただければわかります)たちの行為に注目し、そこに至るまで、そしてその後の過程や状況を考察しながら、私たち自身が生きる社会や人生について振り返るものです。大坂なおみやローザ・パークスなど、日本の読者にも馴染みの深い人物から、日本ではあまり知られていない事例まで、幅広く多様な10の「声」を紹介しています。5人の女性アメリカ研究者たちが、アメリカの歴史的・政治的・社会的文脈を解説することで、単なる偉人列伝でもなく感動物語でもない、多角的で複相的な分析になっています。それと同時に、日本語読者にアメリカの事例を他人事でなく当事者として捉えてもらいたいという強い思いが本を貫いています。

また、この本の発案・執筆・編集・刊行の過程そのものが、5人の共著者そして編集者のあいだの力強いシスターフッドの物語でもあります。怒りや悲しみや笑いをたくさん分かち合いながら、みんなで対等にアイデアを出し合い、オープンに話し合いを重ね、お互いの草稿にコメントし合い、全員で文章や構成を練ることを大切にして作った本です。この「私たち」の熱い思いを、ひとりでも多くの読者と分かち合いたいと思っています。

是非とも読んで、考え、語り、行動していただけたら嬉しいです!