チケットの事情から、成田からヴァンクーヴァーまでは、カナダ航空のビジネスクラスに乗って行ったのですが、ふだんエコノミーでじっと我慢している私にとっては、このビジネスクラスは天国のようで、ヴァンクーヴァーに到着して降りるのが残念なくらいでした。なにしろ、飛行機に乗る前から、空港のラウンジを使わせてもらえ、飲食もタダ、インターネットもタダ、ゆったりとして静かな空間でかすかにモーツアルトの弦楽四重奏が聴こえてくる。いつも成田での待ち時間は、レストランでトンカツまたはうな丼を食べて(ひとりでこういうことをしてしまうところがオヤジ)からユニクロだのなんだので要らない買い物をして過ごす私には、なんとも文明度が高く感じられる。そしていざ飛行機に乗ってみると、この座席がすごい!座席が窓に対して斜めに並んでいるのですが、ひとりひとりの座席が半分屋根のようなものがついたブースになっていて、座ってしまえば周りの人の顔も見えない。椅子はあれやこれやと調整でき、お休みモードにするとなんと全身が平らにまでなる。枕もふかふか、毛布もふわふわ、お水のボトルもついている。もちろん離陸前からシャンペンだのジュースだのが出て来るし、食事もとても満足。飛行機の後方には、ふだんの私と同じ思いをしている人たちが、身体を固くしてじっと耐えているのですが、そうした人たちとのあいだにはカーテンが引かれ、トイレも別で、互いに顔を合わせて気まずい思いをしなくて済むようになっている。出発前の待ち時間からすでに心身状態に違いをつけられ、乗り込むときには別の入口、搭乗時間のあいだは互いの姿すら見ない、というこのありかた、現実社会の階層制度をあまりにも露骨に反映しているようで、複雑な気持ちにもなるのですが、嗚呼、一度ビジネスクラスを経験してしまうと、次にまたエコノミーに乗るときは辛いだろうなあ...(ヴァンクーヴァーからホノルルまではエコノミーでしたが、乗っている時間が6時間弱と比較的短いので、さほど苦ではありませんでした。)
ヴァンクーヴァーに行ったのは初めて(いや、正確にはカリフォルニアに住んでいた子供時代に家族旅行で少しだけ寄ったらしいのですが、ほとんど記憶にない)だったのですが、私にとっては、外国に来たような、住み慣れた場所に来たような、不思議な感覚の街でした。話には聞いていたものの、アジア人、とくに中国系の人口の多さにまず驚き。チャイナタウンでなくても、街じゅうに中国語の看板があり、道行く人たちもアジア人の割合がとても高い。そして、アメリカ合衆国にいるアジア系の人たちとは、なにが違うと言われると説明に困るのだけれど、なにかが少し違っている気がする。街の様子や並んでいる店も、アメリカとほとんど同じようでいて、なにかちょびっと違ったりする。私と同分野で仕事をしている友人のブリティッシュ・コロンビア大学のHenry Yu(今回も彼とその家族としばしお茶をしました)の論文を読んで、自分がいかにカナダの歴史について何も知らないかということに愕然としたのですが、これから是非とも勉強してみようと思いました。ヴァンクーヴァーでの4日間はプライベートな時間だったのですが、誰となにをしていたかについては、またいずれ(と、思わせぶりなことを書いてみたりする)。
7ヶ月ぶりに帰ってきたホノルルは、相も変わらず青空でそよ風がふく快適な気候。ここ2年間、日本とハワイを行ったり来たりしているので、今回は戻ってきていったいどんな気持ちになるのだろうと思っていましたが、帰ってくれば、ゲイのボーイフレンドが空港に迎えに来てくれるし、留守中私のマンションを借りてくれていた人たちがきれいに掃除をしてくれていてすぐに生活を再開できるし、当然ながら自分の好みでそろえた家具やモノたちでいっぱいだし、「ああ、やっぱりここに私の居場所があるんだった」という気持ちになります。とはいえ、半年以上留守にしてから生活を再開するには、さまざまな雑用を片づけなければならず、数日間はばたばたしますが、オフィスに行けば私のやるべきことが文字通り山となって待ち構えているので、時差ぼけになっているヒマもありません。新学期は今月22日から始まります。頑張るぞー。