先週始めた朝5時半からのboot campも二週目に入り、5時起床も少しずつ慣れてきました。なにしろあんな時間にあれだけの人数の女性たちが毎回集まってくるのが私には信じられない。先週はトイレに座るのも辛いくらいだった筋肉痛もだいぶ減ってきて、これは運動に慣れてきたからなのか、運動が足りていないからなのか、よくわかりませんが、とにかくせっせと通っています。
さて、大手書店チェーンのBordersが全国で閉店が決まったことはしばらく前に発表になりましたが、ホノルルの街のなかにあるBordersでも、閉店セールをやっていて、週末覗いてきました。このような大手チェーンが幅をきかせて独立系の味のある書店を駆逐してしまう(といっても、ホノルルにはそういう「独立系の味のある書店」はほとんどないのですが)のは憂えるべきことですが、実際には、サイン会や講演、パネルディスカッション、コンサート、絵本の読み聞かせなどの催しの会場ともなり、店内のソファや喫茶店でじっくり店内の本を吟味したり宿題をやったりするために老若男女が集まってくる(こういう形の書店は日本にはほとんどありませんが、そのうちできてくるのでしょうか)BordersやBarnes & Nobleは、コミュニティのひとつの文化拠点として機能していることも確か。ホノルルのBordersもかなり大きな店舗で、私は行くとほぼ必ず知り合いに会う、という調子だったので、これがなくなるのは街の文化にとってかなりの喪失だと思います。すでに書棚の多くが片づけられていて(本棚まで売られている)、雑然とした店内にはなんとも哀しい空気が漂っていましたが、何冊か小説を買い込んできました。
学期が始まって忙しくなると仕事に直接関係のない本を読む時間はなくなってしまうので、最後にせめて一冊と、週末に一気に読んだのが、柴田元幸先生の翻訳で日本でも人気のポール・オースターの最新作、Sunset Park。オースターの作品を読んだのは実に久しぶりでしたが、「あー、そうだった、オースターの世界はこうだった」と思いながら、寝る間も惜しんで(といっても、朝5時に起きないといけないと思うと夜更かしして小説を読むのはけっこう辛い)読みました。2008年の経済危機のなか、ばらばらに壊れてしまいそうな自分の生活や人生をなんとか保とうとしたり再生させようとしたりする、さまざまな登場人物たちの道筋が、不思議な形で絡み合う様子を描いた小説。なにが素晴らしいって、それぞれの登場人物に対する作者の目線の誠実さと温かさが素晴らしい。それぞれが、傷や弱さや不安やコンプレックスや怒りや罪の意識を抱えながらも、それをそのまま背負って真っ直ぐに生きている。そのなかで、恋に落ちたり恋に敗れたり、失敗したり大事なものを失ったりしながら、傷を負うことを恐れずに生きている。主人公Milesの恋人Pilarに向ける目線、Milesの父親がMilesを思う気持ち(Milesが5年生か6年生のときに書いたTo Kill a Mockingbirdについての作文についての箇所が、とくに感動的だと思っていたのですが、本の最後にあるAcknowledgmentsをみると、これはオースター自身の娘の作文にインスパイアされたもののようです)、その父親がかつての妻とその現在の夫をみての思い、Milesの友人BingがMilesに寄せる想いなど、それぞれの人間関係が、複雑でありながら、美しいとしか形容しがたい愛情に溢れていて、切ない物語でありながら、心洗われます。文章も、シンプルでありながら深くて美しい。そのうち柴田訳が出るだろうとは思いますが、これは決して難しい英語ではないので、ぜひとも原文で味わっていただきたいです。おススメ。