バタバタと学期末の採点その他の仕事を終え、13日(日)にはホノルルでちょっとしたピアノリサイタルをし(やれやれ)、一昨日日本に一時帰国しました。今回は初めて、羽田着のハワイアン航空で帰ってきてみたのですが、これは大変気に入りました。搭乗までのプロセスも、ユナイテッド航空やデルタ航空などより落ち着いているし(JALはほとんど、ANAは一度も乗ったことがないので比較できません)、機体が新しくてピカピカだし、サービスもいいし、羽田着なので都内への移動は便利だし(ただし夜遅めの時間に到着なので、羽田から遠くに行く人にはちょっと不便かも。今回は私は大森の実家に滞在なので、空港からタクシーに乗りました)、これからは毎回これにしようかしらん。
昨日は、運転免許の更新に行ったり新しくメガネを作りに行ったり(『ドット・コム・ラヴァーズ』の読者にはわかっていただけるでしょうが、友達に紹介してもらった大井町のお店で「セクシーでファンキーでかつ『なめんなよ』効果のあるメガネ」を見つけました)しましたが、いやー、やはり日本は、なにごともテキパキとした国だなあとあらためて実感。このテキパキ力に、骨太の政治力と多様性を尊ぶ精神が加われば、コワいものなしの素晴らしい国になるに違いない!
それとはまるで無関係の話題ですが、飛行機のなかで読んだ数週間前の『ニューヨーカー』誌に、中国のオンライン・デーティングについてのなかなか興味深い記事があります。そのタイトル、まさに、The Love Business。(有料購読者以外は全文が読めないようになっていますが、有料でこの記事だけ単独で読むこともできますので、興味のあるかたはどうぞ。)Gong Haiyanという女性が始めた、Jiayuanというオンライン・デーティング・サービスに焦点を当て、現代中国の恋愛・結婚事情を描写したものなのですが、さすが中国、なにごともそのスケールが違うのが面白い。まず、このサービスを始めたGong Haiyanという人物に興味がそそられる。湖南省の山間部の農村出身で、この記事によれば美人でもなければ社交的でもない彼女は、大学院時代に、まだ駆け出し段階のあるオンライン・デーティング・サービスに登録し、12人の男性を選んだものの、ひとつも返事がなく、会社に文句を言ったところ、「あなたのような不細工な女性がそんな高レベルの男性を追いかけたってムリに決まっています」との返事がきたという。この対応に憤慨して、自分の身近にいる人たちを使って自分のオンライン・デーティング・サービスを始めたという。中国でインターネット業界で活躍している他の人たちとは違い、コンピューターの専門知識をもっているわけでも、英語に堪能なわけでも、男性でもない彼女が、こうした分野に出て行くだけでもじゅうぶん感心なことだが、やがてあるソフト開発者(この人物は後にこのサイトで出会った相手と結婚したという)の投資を手に入れ、サービスを拡大するにつれ、オンライン・デーティングの需要の大きさが明らかになっていったという。一日に2千人近くの新規メンバーがサイトに登録し、2006年には登録者が百万人、そして2011にはそれが五千六百万人(!)にまで拡大し、業界では中国最大のサービスとなった。
この記事によれば、オンライン・デーティングのアメリカと中国での最大の相違は、その基本理念にある。アメリカでは、オンライン・デーティングは自分の伴侶となる可能性のある相手との出会いをなるべく広げるのが目的なのに対して、人口13億の中国では、オンライン・デーティングの目的はその反対に、自分の条件に合った相手を絞り込むことにあるという。北京では約40万人の男性登録者がいる。それを、ある23歳の女性は、血液型、身長、星座などの条件を次々に入力してようやく83人まで絞り込んだという。Jiayuanの登録メンバーが答える53の質問には、顔の形のタイプやら、性格を描写する択一式リストがあり、これがなんとも面白い。こうしたサービスの普及にともない、オンライン・デーティングでの成功の秘訣を伝授するような人物やサービスも登場しているという。そうしたアドバイスには、「立派な車の隣で自慢げにポーズをとって写真をとっているような男性には要注意」「最初のデートのときは、女性にとって便利な場所に男性が足を運ぶべき」「男性の四大アクセサリー(腕時計、携帯電話、ベルト、靴)に注目すべし」「お店で払い終わったときに、大事に領収書をしまいこむ男性には要注意」などが含まれる。
あるとき、創設者のGongの目に、ある33歳の研究者のプロフィールが目に止まり、「身長1.62メートル、容姿は平均以上、大学院卒」という条件があげられているのを見て、自分はひとつも当てはまらないと思ったものの、返事をすることにし、「あなたのプロフィールは書き方がいまひとつです。あなたの挙げている条件に合う女性がいたとしても、そんなに要求の多い男性はごめんだと敬遠すると思います」といって、プロフィールの書き方をアドバイスしてあげることにしたという。プロフィールにいろいろ手直しを加えているうちに、彼の条件に合う女性は自分の周りに4人いることに気づき、そのうちのひとりが自分だったという。そうしてふたりはつきあい始め、2度目のデートで彼がプロポーズし、ふたりは自転車に二人乗りして結婚の手続きをしにいったという、微笑ましい話も。
中国の不動産バブルや一人っ子政策などが、恋愛や結婚のありかたに様々な変化をもたらしている中国。現代のジェンダー観や人生観と、インターネットが媒介する市場関係が、どんなふうに相互に作用しているのかを、垣間みさせてくれる記事で、なかなか面白いです。