2013年1月27日日曜日

ブルームバーグ市長、母校に計11億ドル寄付

2007年の金融危機以来とくに、アメリカの大学では、政府の教育予算が大きく削られた州立・市立大学でも、また寄付や基金がかなり減少した私立大学でも、財政難に苦しんでいるところがほとんどです。そんななかで、昨日のニューヨーク・タイムズに載って話題になっているのが、ニューヨークのブルームバーグ市長が、母校のジョンズ・ホプキンス大学に3億5千万ドルの寄付をすると発表したこと。これまでの40年間にブルームバーグ氏が同大学に寄付した額は、これを含めるとなんと11億ドルになるとのこと。ひょえ〜。

マサチューセッツで育ったブルームバーグ氏は、高校生のときは、成績もそれほどよくなく、大きな野心を抱いているわけでもない、普通の青年だったのだが、アルバイト先の会社の社長がジョンズ・ホプキンスの卒業生で、その人物に同大学に応募することを強く勧められ、運よく合格してしまったとのこと。小さな町の生活に退屈していたブルームバーグ青年は、荘重な建物の並ぶキャンパスで、世界のリーダーを目指している若者たちが、さまざまな思想を論じている大学の空気に魅了され、成績も優秀で、さまざまなキャンパス活動においてリーダーシップをとる人物へとめきめき成長していった。そうやって自分の意識や知力を育ててくれた母校への感謝の念を表すために、卒業の翌年に5ドルを寄付したのに始まって、ブルームバーグ氏の財力が膨らむにつれ、氏の母校への寄付もどんどん増えていった。氏の寄付に支えられた同大学は、ここ数十年のあいだに、大学の知名度やランキング、教授陣や学生を集める力、キャンパス施設など、すべてにおいて飛躍的な成長をしてきた、とのこと。とくに、政策にかかわる公衆衛生の分野に興味をもったブルームバーグ氏は、公衆衛生関連の研究増進に多額の寄付をしてきた、とのことです。

医学など以外の分野では、ジョンズ・ホプキンス大学は日本ではそれほど知名度が高くないかもしれませんが、政治学や歴史学などにおいてもたいへん伝統と定評のある、名門大学です。ちなみに、ジョンズ・ホプキンズ出版局もたいへん立派な学術出版局で、私の分野の学術誌、American QuarterlyそしてJournal of Asian American Studiesはともに同出版局が刊行しています。

それにしても、11億ドルはすごい。これは、個人が存命中に教育機関に寄付した額としては、アメリカ史上最大のもので、ロックフェラー、カーネギー、メロン、そして現代においてはビル・ゲイツやウオーレン・バフェットと並ぶフィランソロピストとしてブルームバーグ氏が名を残すことは間違いありません。氏は、自分の財産250億ドルを死ぬ前にすべて寄付すると宣言しており、そのための財団を設立してもいます。

アメリカではフィランソロピーが第三セクターといわれるくらい経済において大きな影響力をもっている国なので、財産のある人たちには是非ともこのような形で寄付をしていただきたい。そして、大学への寄付は、その大学の教授や学生だけでなく、研究や教育の成果を通じて長期的には社会全体へのメリットをもたらすので、おおいに結構。ブルームバーグ氏にも拍手だけれど、卒業生のなかにこれだけの愛校心を育んだジョンズ・ホプキンス大学に拍手を送りたい気持ちにもなります。

それと同時に、財政難に苦しむ州立大学に勤めるものとしては、こういった形で名門私立大学の財産が増大することで、裕福な私立大学と、一般の州立・市立大学の格差がますます拡大していく、ということに一種の苛立ちを感じることも確かです。実際、私立大学と公立大学のあいだには、さまざまな意味で雲泥の違いがあります。名門私立大学で教育を受けた人と、ハワイ大学のような州立大学で教育を受けた人が、社会に出ると同じ土俵で競争しなければいけないということ自体、納得がいかないくらいです。そもそも、公立大学に通うだけでも巨額の学資ローンを抱えたり、学費を払えず進学や卒業をあきらめる若者がたくさんいるいっぽうで、ひとりの個人が250億ドルもの財産を成す社会自体に、なにか大きく歪んだものがあるようにも思えます。この記事に投稿されている読者コメントのなかにも、ブルームバーグ氏の寄付を讃える人たちがたくさんいるいっぽうで、格差社会への疑問を提示している人たちがけっこういるのが面白いです。

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