ヴェトナム戦争期に国防長官を務めたロバート・マクナマラ氏が月曜日に亡くなりました。ケネディ、ジョンソン政権下で軍の総指揮者であったマクナマラ氏は、20世紀最大の影響力をもった国防長官と考えられています。米軍側にも何万人もの死者を出しながらヴェトナム北軍・ヴェトコンの動きを止めることができず、戦争がどんどんと泥沼にはまっていくなかで、マクナマラ氏は在任中すでに戦争の無益さを認識するようになっていたものの、その認識をスタッフおよび世間に公開したのは戦争が終わって20年たってからのことでした。国防省を離れてからもマクナマラ氏はヴェトナム戦争の影にとりつかれ、1995年刊行の自伝や、ドキュメンタリー映画『フォッグ・オブ・ウォー 』で戦争・軍政策についての悔恨の念を表しています。ヴェトナム戦争は、軍事的にも政治的にも社会的にも、20世紀アメリカの最大の汚点となって大きな影を落とし、アフガニスタン・イラクでの戦争を第二のヴェトナムとしないようにという警鐘も多方面から鳴らされています。マクナマラ氏の遺したものを深く考えるのに、今はとくに重要な時期だと思います。
ニューヨーク・タイムズに載ったマクナマラ氏の死亡記事は、なかなか迫力があり、マクナマラ氏本人だけでなくヴェトナム戦争そのものへの追悼記事とも言えます。これだけの紙面を割いて、歴史・政治的文脈と分析のある死亡記事を掲載するのは、さすがにニューヨーク・タイムズだと感心します。