ハワイ大学アメリカ研究学部教授、吉原真里のブログです。『ドット・コム・ラヴァーズーーネットで出会うアメリカの女と男』(中公新書、2008年)刊行を機に、アメリカのインターネット文化や恋愛・結婚・人間関係、また、大学での仕事、ハワイでの生活、そしてアメリカ文化・社会一般についての話題を掲載することを目的に始めました。諸般の事情により、2014年春から2年半ほど投稿を中止していましたが、ドナルド•トランプ氏の大統領選当選の衝撃で長い冬眠より覚め、ブログを再開することにしました。
2011年9月15日木曜日
ブラウン大学シモンズ総長辞任
さて、話変わって、先ほど、私が大学院6年間を過ごしたブラウン大学の現総長、ルース・シモンズ氏が、今年度をもって総長のポストを辞任する意向を明らかにしたとの発表がありました。シモンズ氏は、2001年に、アイビー・リーグ大学の総長になった初の黒人となって話題となりました。当時ブラウン大学では、学生新聞が、保守の評論家デイヴィッド・ホロウィッツ氏が黒人奴隷の子孫への補償に反対する広告記事を掲載したことで大論争のさなかにあり、そんななかで彼女が黒人女性であるということはさらに話題性を呼びました。就任してすぐ、シモンズ総長は、「奴隷制と正義に関する委員会」を設立し、1764年の設立以来、大学設立にかかわった人物たちが奴隷貿易で財を成したという事実を含め、ブラウンがどのように奴隷制にかかわってきたかの歴史を徹底的に調査する任務を与えました。私の知り合いもこの委員会に入っていましたが、当然ながらこの調査と報告書の作成はなかなか大変な作業だったようです。
以後11年間、ブラウン大学は、シモンズ総長のもと、学部生のためのneed-blind admission(奨学金の必要性の有無に関係なく、優秀な学生を入学させ、必要な学生に奨学金を与えること。日本の入試のシステムから考えると意味がよくわからないかも知れませんが、学費が年間5万ドルを超えるアメリカの私立大学の入学審査は非常に複雑で、人種などのアイデンティティ・ポリティクスに加えて、優秀だけれども奨学金をもらえなければ入学できないという学生の扱いはとてもややこしくなります)の確立、教員のための研究環境の充実、医学部の強化など、さまざまな取り組みにおいて成果をあげてきました。などというと、まるで私はブラウンの広報部の人間のようですが、私自身はシモンズ総長下のブラウンを経験していないし、特に大学の宣伝をするつもりもないのですが、ブラウンでの6年間は私の人間形成にとても大きな役割を果たしたと思っているので、愛着もあり、なんだか、「シモンズ総長、おつかれさまでした!」と言いたい気分。
ハーヴァードの現総長ドルー・ギルピン・ファウスト氏を初め、アメリカのエリート大学に女性の総長も増えてきました。女性であればいいというわけではもちろんありませんが、大学生の過半数が女性である現代、大学界のリーダーシップに女性がそれなりの数で存在することはやはり必要。ちなみに、私の所属するハワイ大学のアメリカ研究学部では、今年度初めて、女性の教員が過半数を占めるようになりました。1997年に私が入ったときは、白人のおじさん(おじいさん)たちの中に私がひとりぴょこんと入った状態だったので、その頃と比べると、実に長い道のりを来たものだなあと感慨深いです。新人の採用を含め、職場環境をよりよいものにするように、ビジョンをもって粘り強く努力を続けることの重要さを実感。
2011年9月5日月曜日
アメリカ国家建設と小説の興隆
明日は学部の授業に加えて大学院のゼミのある日なので、その準備に忙しいのですが(アメリカの大学院の人文系の授業では、毎週一冊本を読んで論じるのが普通なので、学生も大変ですが、教えるほうも、すべての本をちゃんと読み直して準備をしようと思うとかなり大変)、今週の課題はCathy DavidsonのRevolution And The Word: The Rise Of The Novel In America
私はこの本は大学院生のときに読んで以来、実に20年ぶりに読み返しましたが、私はこの本を読んで、「アメリカ研究という学問がこういうものなのだったら、これを職業にしてもよい」と興奮したのを思い出しました。当時読んだのは1986年版でしたが、2004年に再版されるにあたって著者があらたに書いた序文が、これまたすごい。自らの過去の研究をふりかえってこのように位置づけられるのは本当に立派。Cathy Davidsonは、今ではデジタル知を含む新しい時代の「知」のありかたを研究して、現在は新著のNow You See It
2011年9月2日金曜日
大学教授の頭のなか
学期中は授業の準備とさまざまな雑用、そして進行中の執筆その他の仕事をこなすのが精一杯で、それ以外のものを読んだりする時間はまるでないのですが、学期が始まると同時にアマゾンから届いてしまい、誘惑に勝てず忙しいさなかに読んでしまったのが、ハーヴァードの社会学者Michele LamontによるHow Professors Think: Inside the Curious World of Academic Judgment
2011年8月23日火曜日
大学院生のためのマジなアドバイス
Mari’s No-Nonsense Tips on Successfully Completing Your Graduate Degree
(and Having a Fulfilling Academic Career)
1. Think twice (and three, four, five . . . times) before entering academe. Know what you’re getting into by finding out what an academic career entails. Give serious thought to why you want to pursue an academic life.
2. Make sure that you’re in the right discipline, school, and department. If you find out that you’re not, give serious thought to changing paths.
3. Have a plan for funding the rest of your graduate study.
4. Do not expect your life to be normal for the duration of graduate school. If you’re not ready or able to have your life revolve around your academic work for the next X [2-3 in the case of an MA, 5-10 in the case of a PhD] years, now is not the right time for you to be in graduate school.
5. Do not expect your family and friends outside of academe to understand, let alone sympathize with, what you’re going through in graduate school.
6. Expect that at least one major family, relationship, financial, automotive, health, housing, or some other type of disaster will be part of your life in the next few years. Acquire the skills of compartmentalization.
7. Plan your course of study with a long-term vision. Fill the gaps in your training early.
8. Do not underestimate the importance of acquiring strong writing skills. Make specific efforts to strengthen your writing skills.
9. Choose your mentors carefully. Develop and maintain a good, healthy relationship with your mentors. Have role models. Keep your mentors posted of your progress.
10. Nurture a community of peers with whom to share and mutually critique work.
11. Set high standards for yourself, but be realistic in your expectations. Remember that graduate school is only a beginning step in your long academic career.
12. Know that feeling stuck, overwhelmed, lost, helpless, unimportant, unoriginal, etc. is par for the course. Do not let those feelings steer you away from your goals. Find a way to pull yourself out of self-doubt and to focus on concrete goals at hand.
13. Try to keep perspective. Take your work very seriously, but don’t take yourself too seriously.
14. Maintain good physical and mental health.
15. When in doubt, remind yourself why you started this in the first place.