2010年5月8日土曜日

とびきりのゴールデンウィーク




普段ハワイに住んでいる私は、春が来る、暖かくなるということのありがたみを、しばらく忘れていました。勇気を奮い立たせることなくジョギングや散歩に行けるというのは、本当に素晴らしいことですねえ。

ゴールデンウィークは全国的に天気に恵まれたようですが、私は実にとびきりの連休を過ごしました。前半は原稿整理でしたが、まず5月2日には、ラフォルジュルネに行って竹澤恭子さんの演奏を聴きました。ラフォルジュルネについては噂は聞いていたし、『クラシックの音楽祭がなぜ100万人を集めたのか ~ラ・フォル・ジュルネの奇跡~』も読んだので、催しとして興味を持っていたのですが、いつもはその時期に日本にいないので、実際に足を運んだのは今回が初めてでした。もっとたくさん演奏を聴きたかったのですが、私がカンボジアに行っているあいだに前売券はほとんど売り切れてしまっていて、今年はひとつのコンサートに行くだけとなりましたが、なるほどイベントとしてはとても面白い企画だと思いました。単純に言って、クラシック音楽のイベントにあれだけの人を集められるのは確かにすごい。それに、子供を連れて来られるというのも、子供を生演奏に触れさせるという意味でも、普段は子育てで忙しくてコンサートに行きたくても行けない親にその機会を与えるという意味でも、とてもよい。45分というコンサートの長さも、熱心なファンにはちょっと物足りなくても、クラシックの演奏会に行き慣れていない人にはちょうどいいし、コンサートのハシゴをするにもよい。それと同時に、東京国際フォーラムという立地条件とゴールデンウィークの集客力があるのだったら、もっといろんなことができる可能性を秘めているだろうとも思いました。来年もこの時期には日本にいることになりそうなので、次回は取材をさせていただこうかと考えています。

そしてその後の3日間は、兵庫県豊岡市但東町に行ってきました。大学の同級生が、そこで自給自足の生活を目指して農業をしているというので、いったいどんな生活なのか、友達ふたりと一緒に見に行ってきたのです。その同級生は、大学卒業後は普通のサラリーマン(勤務先は政府系機関だったので、「会社員」とはちょっと違うものの、スーツを着てオフィスに通うサラリーマン)をしていたのですが、思うところあって仕事を辞め、造園業の修業に入り、数年後には家族とともに今の場所に住むことを決め、今ではときどき樹木医の仕事をしながら農業をしています。冬は寒さと雪の厳しい過疎の町(一番近い駅までは車で40分)で、天候や、せっかく作った作物を荒らして食べてしまう鹿やイノシシと闘いながらの生活は、決して楽しいといったものではないようで、そういう暮らしに勝手にロマンを感じる都会の人間は実に愚かだというのが感じられますが、それでも、いわゆるメインストリームの生き方と訣別して、自分が正しいと思う生き方を貫いている姿には頭が下がります。彼のような生き方は誰にでもできるものでもないし、誰もがそうした生活を目指すべきだとは思いませんが、彼にとってそれが大事なのと同じくらい、自分が人生において大事だと思うものはなにかということを、今一度考えてみよう、という気持ちにはさせられます。そしてまた、彼の家族の姿、とくに今年小学一年生の長男の、感動的なまでにまっすぐな育ち方(天真爛漫で明るく大人とも楽しくよくしゃべるいっぽうで、よくしつけられていて大人同士がしゃべっているときには邪魔をせずおとなしくしているし、じっくり集中してものごとを考えることが好きだし、論理的に考えて言いたいことをきちんと言葉で伝えることができる、本当に素晴らしい子です)が、彼の選んだ生き方の正しさを物語っていると思いました。彼に連れて行ってもらって見たコウノトリや天の橋立もとてもよかったけれど、そんなことよりなにより、彼の生活ぶりを垣間みて、彼の家族と時間を過ごすことができたことで、自分の人生が豊かになった気がします。その家族の様子を写真でお伝えしたいところですが、せっかくそういう生活を選んでいる人たちの顔をこうした場で公開するのは不適切だと思うので、家と田畑(今年はまだ田植えが始まっていないのでまだなにもないですが)、そして山菜採りとタケノコ堀りに行く後ろ姿だけ、お楽しみください。「鶴瓶の家族に乾杯」のような雰囲気でしょう。