2010年11月11日木曜日

Time Stands Still

ニューヨークというところは、実に面白可笑しい街です。アッパーウェストサイドでブロードウェイ沿いを歩いていると、すぐ後ろで70代くらいのユダヤ系らしき夫婦が歩きながら大声で喧嘩をしている。その喧嘩が、妻:「あなたはほんとにスノッブなんだから!」夫:「スノッブなんかじゃないさ!」という内容で、ふたりともムキになって言い争いをしているのが可笑しい。また、コロンビア大学の近くにあるLabyrinth Bookstoreという書店では、アメリカのインテリを風刺した漫画にいかにも出てきそうな男性ふたり(こういうタイプの人間はコロンビア周辺にたくさんいます)が、なんだかの映画がよかったの悪かったので、これまたムキになって大論争をしている。そんなに店内すべてに響き渡るような大声で議論しなくてもいいんじゃないかと思ういっぽうで、聞いていてなんとも面白いので思わず聞いてしまうのは、やはりそうした議論が一種のパフォーマンスでもあるからでしょう。地下鉄に乗っていても、道を歩いていても、ほんとうに感心するくらいいろんな種類の人間がいて(「種類」というのは、人種や民族もそうですが、それだけではなく、階層やら文化的スタイルやらいろいろ)、笑ってしまうくらいです。

ちなみに、今日は『ドット・コム・ラヴァーズ』に出てくる「ジョナサン」とランチをしました。彼とは『ドット・コム・ラヴァーズ』で書いた交際の以後も、ときどきメールをやりとりしたり、私がニューヨークに来たときは会ったりする、いい友達関係が続いているのですが、今回会ったのは数年ぶりでした。学問とは関係のない仕事をしているにもかかわらず、二冊めの著書、それもきちんとした研究にもとづいた本を大学出版から出すことが決まっており、今編集作業中だということ。誰にも頼まれず、「昼間の仕事」の足しにもならないのに、自分のやりたいことをしっかりと続けてそれを形にしている人は、素敵な年齢の重ねかたをしているなあと思いました。彼と私はとても「ケミストリー」がいいので、同じ街に住んでいたら長期的な関係になっていたんじゃないかという気がします。そんなことを言っても仕方ないですが...

さて、今日は、ブロードウェイで、Time Stands Stillというお芝居を観てきました。このブログでも何度か言及しているように、私のもっとも好きな女優はLaura Linneyで、何年か前に彼女が主演したブロードウェイのSight Unseenというお芝居も観たのですが、今回の作品はSight Unseenと同じ脚本家David Marguliesによるもの。ジャーナリストと報道カメラマンとして中東などの戦場をまわる男女が、想像を絶する惨劇を目撃して自ら心身に傷を負いアメリカに戻ったあと、その傷とどのように向き合い、自分の人生や自分にとって大事な相手と距離をはかっていくか、というテーマなのですが、脚本も演出も演技も実に素晴らしく、公演中は劇場全体が息を詰めてしーんとなっていました。登場人物四人それぞれの愛情も弱さもひたむきさも痛いほどわかり、それぞれに共感できるし、最後が実に切ない。Laura Linneyの演技はさすがで、さらにファンになってしまいました。もう一度観たいくらいです。ニューヨーク在住のかた、またはニューヨークを訪問する予定のあるかたには、是非ともおすすめです。

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