ハワイ大学アメリカ研究学部教授、吉原真里のブログです。『ドット・コム・ラヴァーズーーネットで出会うアメリカの女と男』(中公新書、2008年)刊行を機に、アメリカのインターネット文化や恋愛・結婚・人間関係、また、大学での仕事、ハワイでの生活、そしてアメリカ文化・社会一般についての話題を掲載することを目的に始めました。諸般の事情により、2014年春から2年半ほど投稿を中止していましたが、ドナルド•トランプ氏の大統領選当選の衝撃で長い冬眠より覚め、ブログを再開することにしました。
2011年1月12日水曜日
アリゾナ銃撃事件追悼式典
6人の死亡者と14人の負傷者を出したアリゾナ州ツーソンでの銃撃事件は、政治との関連が明らかではないものの、近年移民法などをめぐって政治的に大きく分裂してきたアリゾナが舞台であったことから、アメリカじゅうに大きな波紋をよんでいます。現地で行われた追悼式典に出席したオバマ大統領の演説が素晴らしいです。とくに最後の10分が素晴らしい。犠牲者たちとその周囲の人々への哀悼の意を示しながらも、事件の原因を単純化せず、2001年9月11日に生まれた9歳の元気いっぱいな女の子を含む犠牲者たちがアメリカという国にたいして抱いていた期待に恥じないような社会にしていこうと、国民すべてに語りかけるその演説は、その言葉においても論理においても感情においても、感動せずにはいられません。ここで説かれるcivilityとは、「品性」とか「礼節」とかいったふうに訳せるでしょうが、この単語の形容詞形であるcivilが、「市民の」「公の」「国家の」「社会の」といった意味でもあることを、深く考えさせられる演説です。ああ、オバマ大統領のパワーはこういうところにあったのだ、と思い出されます。日本のテレビではまるごとは放送されないでしょうから、ぜひこちらで観てみてください。