2011年7月19日火曜日

野坂操壽 x 沢井一恵 熊本公演

一泊で熊本に行ってきました。昨日の午前中の飛行機で帰ってくるはずが、台風の影響でフライトがキャンセルになり、午後の便に変更してもらい、そのぶんできた時間は、現在熊本市の副市長をしている大学の同級生とランチをしながら面白い熊本事情をいろいろと聞かせてもらいました。

今回熊本に行ったのは、熊本芸術劇場のコンサートホールで行われた、お箏のコンサートを聴きに行くため。自分が邦楽をやるわけでもないのに、お箏を聴きにいくためにわざわざ飛行機に乗って熊本まで行ったのは、このコンサートに出演したふたりのアンサンブルを一曲だけ先月東京で聴いて、「このふたりの演奏がコンサートまるごと聴けるのなら、熊本まで行く価値はじゅうぶんある」と確信したからであります。このふたりとは、野坂操壽先生と沢井一恵先生。今の自分の研究の一環で邦楽の事情にも興味があるので、二十五絃箏の演奏活動をしている私の親友の佐藤康子さんから野坂先生を紹介していただき、たいへん立派なかたでありながらまったく偉ぶらず気さくで明るいその素晴らしい人間性と、芸術に対する妥協のない真っ直ぐな姿勢に、私はすっかり惚れ込み、野坂先生大ファンとなりました。今回は、その野坂先生と、同じお箏といってもその野坂先生とはずいぶんと違う分野で活動を続けてこられた沢井一恵先生とのジョイントコンサート。野坂先生がおもに二十五絃、沢井先生が十七絃を演奏され、それぞれのソロが一曲ずつと、ふたりのアンサンブルが三曲、そしておふたりと熊本の箏演奏者たちの合奏が一曲という充実した演奏会。もうとにかく、それぞれのソロもさることながら、十七絃と二十五絃という味わいの違う楽器のかけ合いや重なり具合が生み出す迫力や緊張感や高揚感といったら、言葉に表せないものがあり、熊本まで出かけていって本当によかった!アンサンブルのうちの一曲は、今回のツアーに際してこのふたりのマエストロのために公募された新曲のなかから二位に入賞(最優秀賞該当なし)した前田智子さんの作品「青蓮華」。この作品も、箏のさまざまな音色がみごとに活かされた、優しくも哀しくも強くもある美しい曲でした。しかしなんといっても、私の最大のお気に入りは、沢井忠夫作曲の「百花譜」という作品。私のような無知な素人がお箏という楽器について抱いているイメージを根底から覆してくれる、とてつもない緊張感と彩りと興奮に満ちた曲。だまされたと思って是非とも体験していただきたい。といっても、このおふたりのアンサンブルの録音はまだ存在しないので、これから全国で展開される予定のツアーでぜひ生演奏を。そのコンサートが地元にくるまでは、とりあえず、野坂先生と沢井先生それぞれのCDをまずは聴いてみてください。私は、野坂先生の「錦木によせて」と「琵琶行」を初めて聴いたときには、心底ぶったまげました。

今回は、お箏とはなんの関係もない私が、おふたりの先生そしてこのコンサートの企画・制作をした「邦楽ジャーナル」の編集部のかたがた(私は研究のため、「邦楽ジャーナル」の編集部を訪問していろいろお話を聞かせていただいたのですが、編集長をはじめとするこちらのスタッフも、純粋で真面目なこだわりに突き動かされていて、お話をしていて楽しく刺激的です)などに混じって、コンサートのあと夜遅くまで飲みながらのおしゃべりにまで入れていただき、至福のときを過ごしました。野坂先生と沢井先生はおふたりとも70代。「70代にもかかわらず〜」という表現はまるで失礼、それどころか、「ああいう人間になれるのなら、私も早く70代になりたい!」と思うくらい、おふたりとも強く美しく、志が高くバイタリティに満ち、そして信じられないくらい可愛らしい。こんなに魅力的な女性たちと時間をともにする機会を得ただけで、ほんとうに幸せです。

熊本に朝早い便で出発したため、私はなでしこジャパンが1—1に追いついた、一番肝心なところで家を出なくてはならず、感動の試合を見逃してしまったのが無念なのですが(でも、電車やバスのなかでフェースブックをじっと凝視し、いろんな友達が次々と試合の様子を興奮して投稿してくれるので、まるで実況中継を見ているようでした。私はツイッターはやらないのですが、ツイッターやフェースブックは、新たなスポーツ観戦の形式を生み出している気がします)、野坂操壽と沢井一恵というふたりのなでしこも、日本の誇りとなる女性たち!

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