2011年7月10日日曜日

ミネソタ国際ピアノ-e-コンクール

昨日は、大学一・二年生のときのクラスの同窓会があって(「あって」というか、私が言い出しっぺとなって企画したのですが)、たいへん楽しい一晩を過ごしてきました。前回の私の日本滞在中に、卒業後初めてこの集まりがあったのですが、卒業後20年、つまり、大学時代が人生のちょうど中間地点となったこの時期に、共にフランス語や体育の授業を受けた(さぼった)人たちと顔を合わせるのは、なんともいえない感慨があり、参加者全員、形容しがたい高揚感を味わったので、またときどきやりましょうということになって、今回の開催に至りました。20代や30代の頃は、自分のことで精一杯だったり、周りの人のことが気になったり競争心があったりして、同級生との関係も意外に難しかったりしますが、40代ともなると、みなそれぞれが、頑張っているなかでも、失敗や挫折も味わったり、仕事や家庭生活で軌道修正や再出発をしたり、あるいは大きな病気をしたりと、山あり谷ありの経験をし、そのなかで自分らしい人生を生きるようになってきているので、他の人に対しても、素直に謙虚に優しく向き合うことができるんだと思います。昨日も、そういう集まりでした。

まったく関係のない話題ですが、つい一昨日まで、ミネソタ州のセント・ポールで、ミネソタ国際ピアノ-e-コンクール(Minnesota International Piano-e-Competition)というジュニア・コンクールが開催されていました。イベント名になぜ「e」という文字がついているかというと、このコンクールでは、ヤマハCFIIISというコンサートグランドピアノに内蔵されたDisklavierという電子技術によって、演奏されるピアノの音がそのまま直接インターネット上で流されると同時に録音されるからです。アコースティックの楽器と最新の技術の融合によって、コンクールの模様が最高の音質で世界に伝えられるわけです。『ヴァンクライバーン 国際ピアノコンクール』で紹介したように、2009年のクライバーン・コンクールが一部始終ネット中継されたのは画期的なことでした。が、技術というものは、一度できてしまえば当たり前になってしまうようで、今回のチャイコフスキー・コンクールやアマチュア・クライバーンを含め、コンクールではネット中継が当然という時代になってきているようですが、楽器から直接音が伝わるというこの技術もすごい。

そして、このコンクールは、出場資格が17歳までというジュニア・コンクールなのですが、課されている演目の難易度も量もスゴいし、出場者の演奏も、信じられないくらいレベルが高い。さらに、出場者の顔ぶれを見ると、『Musicians from a Different Shore: Asians and Asian Americans in Classical Music』でクラシック音楽におけるアジア人の台頭を本まるごと一冊使って論じたこの私でも呆れてしまうくらい、アジア人・アジア系が多い。チャイコフスキー・コンクールでも韓国勢がいろいろな部門でたいへん優秀な成績を収めていましたが、このコンクールではなにしろ、本選まで残った5人は見事に全員がアジア人またはアジア系。誰にも文句を言わせない圧倒的な力で一位となった香港のAristo Sham君は、こういうのを天才というんだろうなあと思わせる音楽性と技術的腕前。日本の尾崎未空さんもファイナリストのひとりとなり、カナダのAnnie Zhouさんとともに四位を獲得。いやあ、すごいなあ。そして、こういうジュニア・コンクールで優秀な成績をおさめる人たちのすべてが音楽家になるわけではなく、それこそ医者や弁護士や学者やビジネスマンになる人もいるんだろうから、彼らのうちの何人かが、20年後にはアマチュア・クライバーンに出場するのかもしれないと思うと、思うようにならない指や足(今回アマチュア・クライバーンに出て、自分がペダルの使い方を基本から勉強しなければいけないということを認識しました)に業を煮やしながら練習している自分が馬鹿馬鹿しい気持ちにすらなってきます。まあそれはともかくとして、才能があり努力を惜しまない世界の10代の若者たちの演奏には、プロのコンクールとも、アマチュア・コンクールとも違う感動がありますので、アーカイブされた動画を是非見てみてください。