共和党のロムニー氏が副大統領候補にポール・ライアン氏を指名して以来、富裕層の所得税を減らし社会的弱者のためのさまざまなプログラムを削除するというライアン氏の極端な財政案に、リベラル派だけでなくカトリック教会などからも大いなる反発が起こっていますが、そんなさなかに、共和党の政策案にさらなる波紋を投げかけているのが、昨日のミズーリ州上院議員候補のトッド・エイキン氏の発言。中絶問題についての質問を受けて、「『正当なレイプ』の場合には、女性の身体は妊娠を拒絶するようになっている」という発言をして、たいへんな騒動を巻き起こしています。あらゆる意味で問題に満ちたこの発言を糾弾しているのは、プロ・チョイスの女性団体や民主党の政治家ばかりでなく、ロムニー氏を初めとする共和党のリーダーたちも、エイキン氏の発言を強く批判し、彼に選挙戦から降りるようプレッシャーをかけています。(この投稿の時点では、エイキン氏は引き続き選挙に出ることを表明していますが、今日の夕方までに彼が辞退しない場合には、来週の共和党全国大会を控え選挙全体に大きな影響が出るので、もしかするとじきに別の展開があるかもしれません。)
エイキン氏の発言が、大統領選そして全国の選挙にどのような影響を与えるかはまだ不明ですが、こんな騒動のさなかに、共和党の委員会は、中絶に反対する立場をさらに強化し、中絶を禁止する憲法修正を求める方針を党の綱領に盛り込む、という動きをしています。しかも、この方針には、強姦や近親相姦による妊娠についての扱いも含まれておらず、それらの扱いは各州に委ねられるべき、との立場。
経済政策が大統領選の要になるとは思いますが、中絶論争を初めとするこうした「社会問題」がアメリカの政治をかくも分断するさまは、アメリカ研究を専門とし、アメリカで20年間以上生活してきた私にも、いまだに深く困惑させられます。