2012年8月28日火曜日

ヴァン・クライバーン氏、末期骨がん

ピアニストのヴァン・クライバーン氏が、末期の骨がんと診断された、とのニュースが昨日発表になりました。

演奏の舞台や公の場には姿を見せなくなってすでに数十年たっているクライバーン氏ですが、冷戦さなかの1958年にこのテキサスの青年が第一回チャイコフスキー・コンクールで優勝したときの騒ぎは、現代ではちょっと想像しがたいものでした。チャイコフスキーのピアノ協奏曲第一番の録音は驚異的なヒットとなり、クライバーン氏はピアノやクラシック音楽の世界を超えて世界的なスターとして、アメリカ文化史や文化外交の重要な一こまとなったのでした。その後のクライバーン氏のキャリアや、彼の功績を記念して設立されたヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクールを初めとするクライバーン財団の活動については、拙著を読んでいただければわかります。今でもフォート・ワースのコミュニティの人々には心から愛されている人物であることが、地元の人たちと話していると明らかです。去年のアマチュア・コンクールのときに、年齢は感じられたけれども、心身ともにとてもしっかりとしていて、温かい真心をもって接してくださったのが思い出されます。参加者全員が舞台上で賞状を受け取るときには、ひとりひとりと丁寧に言葉を交わして、力強く握手をしてくださいました。私はついでにお願いしてハグと頬にキスもしていただいたのが、素敵な思い出です。


クライバーン・コンクール発足以来50年、そして来年2013年はまたクライバーン・コンクールの年。そのコンクールの場でクライバーン氏本人の姿を見られるといいのですが。