私の友人で素晴らしいマリンバ奏者である名倉誠人さんのことは以前にこのブログでも紹介したことがありますが、その名倉さんが、Kickstarterというプラットフォームを使って、新しいCD作成のための資金集めをしています。
名倉さんは、目を見張るような技術と深く豊かな音楽性に満ちた演奏家であるだけでなく、現代作曲家への作品委嘱を通して、マリンバという楽器のための新しい音楽の幅を広げることにキャリアを注いでいる、ビジョンと独創性に富んだ芸術家です。また、アフリカや南米、北米というルートを辿って発達してきたマリンバという楽器のさまざまな可能性を、作曲家とともに探ってきた音楽家でもあります。名倉さんのコンサートでは、演奏される作品のほとんどあるいは全曲が、名倉さんのために作曲された曲の世界初演、ということも多く、聴衆にとってはそんな贅沢なことはありません。私は初めて名倉さんの演奏をニューヨークで聴いたとき、木や森を思わせる有機的な響きに心も身体も揺さぶられる思いをしましたが、とくにここ数年間は、名倉さんはこの「木と森」というテーマに真正面から取り組み、このテーマにかかわる作品を作曲家に委嘱しています。
世界各地で演奏を重ねてきたこれらの作品を集めたアルバムを、京都で録音しているのですが、このアルバムの制作・販売にかかる費用を集めるために、今回初めて使っているというのがこのKickstarter。私もこのたび初めて知りましたが、さまざまな芸術その他のプロジェクトが大小の資金を一般の人々から集めるためにできているネット上のプラットフォーム。なるほど現代ならではで、面白い方法だと思います。企画者が設定して期限までに目標額に到達した時点で、寄付を表明した人たちのクレジットカードから指定の額が引き落とされるけれども、もしも目標額に満たなければ、寄付者は負担ゼロ。つまり、オールorナッシングというわけです。(1万ドルを必要とする企画に、5千ドルしか集まらなかった場合、半額でその企画を実行するのは無理があるし、寄付者にとってもそんな中途半端な企画を支援するのは納得がいかない、という論理。)どんなに小額でも、寄付することによって、このプロジェクトの実現に自分がかかわっている、という気持ちになれ、企画者を継続的に支援する気持ちも生まれる。せっかく自分が寄付するのだから、ぜひ実現してほしいと、周りの人たちにもせっせと宣伝する。というわけで、企画者にも寄付者にもやる気をかき立てる仕組みになっているわけです。なかなかウマい。
というわけで、私も小額ながら寄付しました。名倉さんのCDには、不満を抱くことは絶対にないと断言いたしますので、少しでも興味のあるかたは、どんな額でもいいので寄付してみてください。サイトは英語のみですが、クレジットカードの情報を入れるだけです(アマゾンとつながっています)のでそんなに難しいことはありません。