2021年11月7日日曜日

Symphony magazine:アメリカのオーケストラと「アジア人」音楽家 

コロナ禍におけるアジア人への暴力の急増、ブラックライヴスマター運動などの流れの中で、アメリカの芸術界も正面から人種問題に向き合う動きが盛り上がってきています。メトロポリタンオペラのシーズンオープニングを飾ったオペラ、Fire Shut Up In My Bonesは、メト史上初(!)の黒人作曲家による作品上演で大きく話題を集めました。私もMet Live in HDをホノルルの映画館で観ましたが、作品も演奏も演出も本当に素晴らしく、深く感動しました。これまで何年にもわたって人種と音楽・表象について研究してきましたが、メトの舞台で黒人の物語が黒人の声や身体で演じられ語られるのを大画面で体験してみると、今までこうした作品が上演されてこなかったことが世界にとってどれほどの損失であったかを改めて感じました。モーツァルトもプッチーニもワーグナーも大いに結構、でも多様なアーティストによる多様な物語がいつも普通に上演されれば、「オペラ」についての人々の意識は大いに違ったものになり、もっともっと多くの人たちが劇場に足を運ぶようになる筈だし、オペラという芸術的な可能性が無限に広がるに違いない。そう思いました。

そんな中で、今年6月に開催されたアメリカオーケストラ連盟のオンラインカンファレンスで企画されたパネルに登壇したのですが、それを契機に依頼された記事が、同組織の機関誌であるSymphony誌に掲載されました。クラシック音楽界、特にオーケストラにおけるアジア人音楽家の位置付けや扱いについて、主にオーケストラ業界の読者を想定して書いた文章なので、前回の投稿で紹介したショパンコンクールについての記事とはだいぶトーンが違っています。ただ、ショパンコンクールの出場者や入賞者にアジア人が多いこと、アメリカのオーケストラにアジア人が多いことは、クラシック音楽におけるアジア人への差別がないことの証明には決してならないことが伝われば幸いです。今なら無料でオンラインでアクセスできますので、ぜひお読みください。