たとえば、今日の話題で言えば、小沢一郎氏率いる訪中団。600人って、ただごとではないと思うのですが、これは一体どういう意味があるのでしょうか。議員数名を連れて中国共産党の首脳と会談をするというのならともかく、議員140人を含む600人が一斉に訪れるというのは、明らかになんらかのメッセージです。ではそのメッセージはなんなのか。その基本的なことをきちんと問いかけている(そして答えている)報道をまだ見ません。「小沢氏の政治力を示す」という説明もありますが、それじゃあいくらなんでも分析に欠けていて訳がわからない。だいたい、この600人はいったい中国に行ってなにをしているんでしょうか。小沢氏本人は明日はもうソウルに移動するらしく、残りの一団は、「数グループに分かれて軍事施設や汚水処理場を視察」し、「万里の長城を見学」する予定らしいですが、果たしてこれにはどういう意味があるんでしょう。訪中が悪いというのではありません。どう考えても中国はこれからの世界でたいへんな影響力をもつ国ですから、政治家が積極的に中国との交流を図るのは大事なことですが、だからこそ、それをやる政治家はきちんとした理念と方針をもって、それを報道するジャーナリズムは深い分析をもって、国民に伝えてほしいものです。
そして、いよいよ暗礁に乗り上げてしまったらしい普天間問題。グアムを訪問した北沢防衛相が、「グアム移転は日米合意から大きく外れる」と言ったそうですが、これはいったいどういう意味なのかもよくわからない。グアムでなにを見てそう判断することになったのか。地勢的条件や設備の問題なら、わざわざ現地に行かなくてもわかるだろうし、そもそもなぜ日本の防衛相が、アメリカ領であるグアムを米軍基地の移転先候補として視察に行き、「日米合意から外れる」と判断するのか。北沢氏が「グアムで結構」と判断したらグアムに移転することになったのか。まるで日本とアメリカの政府の意向でグアムはどうにでもなるかのような話の流れですが、グアムには18万人の住民がいます。そこに既にこれから8000人の海兵隊員(その家族や関係者を入れると3万人にもなると言われている)が駐留しようとしていて、そんな小さな島にどーんと米軍が押し寄せたら、社会的にも経済的にも自然環境的にもいろいろなインパクトが及ぶのは必至。グアム知事は「グアムには受け入れ態勢がない」と言っている。だいたいグアムの住民の意向はどうなのか。なぜそういう問いが報道に出てこないのでしょうか。沖縄住民の我慢ももう限界に達しているし、もちろん早く普天間から基地を移転させることはとても重要ですが、「自分の県や自分の国の外であればなんでもいい」という主張では、軍事再編の根本的な問題は解決されないので、基地反対の活動家も、ジャーナリズムも、より大きな視点で問題をとらえてほしいです。