2010年8月5日木曜日

エレナ・ケーガン、米最高裁判事に承認

もとハーヴァード・ロースクールの学部長(deanというのは教員の長とは違って運営者なので、「学部長」と訳すと意味合いがちょっと違うのですが、他に適切な日本語もないのでとりあえず和訳の慣例に従っておきましょう)、オバマ政権で訟務長官を務めてきたエレナ・ケーガンが、最高裁判事として引退するスティーヴンス判事の代わりとしてオバマ大統領に指名されていたことは以前の投稿で書きましたが、このたび63対37で上院で承認され、史上最年少、女性では4人目の最高裁判事となることが決まりました。

おそらくスムーズに承認されるであろうことは、しばらく前から予測されており、じっさい、承認の公聴会でも大きな問題はありませんでしたが、投票の結果は政党によってはっきりと分かれ、党派を超えた連帯を目指すオバマ政権の理念がなかなか実現しにくいことがここでも明らかになりました。彼女の指名に反対する共和党議員は、彼女が判事の経験がないこと、また、ハーヴァード在任中に、軍が同性愛者に差別的な方針をとっていることへの抗議として軍がハーヴァード学内で士官をリクルートすることを禁止したことなどを理由に挙げ、彼女のリベラルな政治性を判決に持ち込むと警告してきました。じっさいには、公聴会の場でみられた彼女の司法にかんする意見は、リベラル派が多少いらつくくらい慎重なものであり、また、彼女の任命によって最高裁判事の政治的指向のバランスは基本的に現状が維持されることになるので、すぐに大きな変化があるとは考えられません。ただし、この先、同性婚、移民法、健康保険など、政治性の強い訴訟が最高裁にもたらされるので、判事たちの動向は大きく注目されます。