学生のプライバシー保護や自己責任の観点から、20歳前後の学生を自立した大人として扱う(たとえば、アメリカの大学では、学生本人の署名による許可がなければ、大学は親に成績や生活状況を報告できない決まりになっています)いっぽうで、大学教育のコストが加速度的に上昇している(アメリカの私立大学では、授業料と寮費や食費を合わせると年間5万ドルもするのが一般的です)なか、子どもが大学でどんな生活を送っているのかと、しきりに首を突っ込む親が増えているのも事実。日本でも、私が学生だった頃は、子どもが大学に入ってしまえば後は親の出る幕はまるでなく、親もそれを歓迎していた(と思う)ものですが(親を卒業式によんでもいいということを私が知らなかったので、卒業式にすら来ませんでした)、今では大学でも親のための説明会やら懇親会やらがやたらとあるらしく、就職対策にまでも親がいろいろと口を出してくるそうです。やれやれ。親も大変ですが、子も大変、大学の先生も大変です。
ハワイ大学アメリカ研究学部教授、吉原真里のブログです。『ドット・コム・ラヴァーズーーネットで出会うアメリカの女と男』(中公新書、2008年)刊行を機に、アメリカのインターネット文化や恋愛・結婚・人間関係、また、大学での仕事、ハワイでの生活、そしてアメリカ文化・社会一般についての話題を掲載することを目的に始めました。諸般の事情により、2014年春から2年半ほど投稿を中止していましたが、ドナルド•トランプ氏の大統領選当選の衝撃で長い冬眠より覚め、ブログを再開することにしました。
2010年8月23日月曜日
アメリカの大学「親の子離れ対策」
アメリカの新学期が始まる時期の今、とくに大学生活の始まりにまつわる話題が多いです。以前の投稿でも書いたように、アメリカでは大学生活は親元を離れて自立するための時期と一般的に考えられているものの、寮生活を始める子どもを大学に送り届ける親の側にはいろいろと不安がつきもので、部屋に荷物を運び終わってからもなかなか子どもに別れを告げることができず、何日間も大学街に滞在して子どもの動向を見守る親もいる、とのこと。子どものほうは、親の庇護や監視から解放されて同世代の新しい仲間と新生活を始めることにワクワクしているものの、親のほうがなかなか子離れできない、というのはよくあることのようで、そうした親に、「子どもはもう新しい生活を始めているのだ」と認識させさっさと家に帰ってもらうための対策として、わざわざ親子離れのための式のようなものを開催する大学まである、とのこと。ニューヨーク・タイムズの記事によると、たとえばアイオワ州にある有名私立大学のGrinnell Collegeでは、新入生が寮に入る日に、荷物を運び終わった後で全員が体育館に集まり、親は講堂の片側、学生は反対側に座って、「子どもはもう別世界に行ってしまったんだ」と親に気づかせ、正式にお別れを言って大学を去らせる、という儀式をしているそうです。