バルト三国が独立したときのことは覚えていますが、そのときもそれほど詳しい報道を見聴きした記憶もなく、「ソ連から独立した」という以上のことは正直言ってまったくなにも知らなかったのですが、この映画を観て、よくもこんなことを自分がこれまで知らずにきたものだと呆れると同時に、エストニアの人々の粘り強さと勇気と知性に実に感動しました。国民の3人に1人が参加するという「歌の祭典」も感動ですが、周辺の強国(ロシアの以前にはデンマークやらスエーデンの支配があったのですが、この部分は映画には出てこない)ロシア、ソ連、ナチス、そしてまたソ連に支配・占領され、住民の多くがまともな嫌疑もないままシベリアに連行されるなど、実に苛酷な歴史を生きるなか、民族の誇りを保ち続け、ソ連共産政府を相手に、根気と勇気のある独立運動を展開し、ゴルバチョフのペレストロイカとグラスノスチの波をうまく利用し、内部の対立も理性的に乗り越え、軍事介入の危機のさなか、独立を手に入れたというその歴史、そしてそれがかくも最近のことであるという事実に、ひたすら驚かされました。「自分たちの国」にかける思いの強さというのはすごいものです。『日本語が亡びるとき』との関連で、エストニアの国語、そして文学について是非知りたいと思いました。美しい土地でもあるようだし、行ってもみたい。とにかく、たいへん勉強になると同時に感動を得られる映画ですので、ぜひどうぞ。