2011年11月13日日曜日

オンライン・デーティングの科学調査

「こんなのが出てるよ」と友達が送ってくれたのが、ニューヨーク・タイムズに掲載された、オンライン・デーティングの科学調査の結果についての記事。なかなか面白い。


2007年から2009年までにできた異性愛者同士のカップルの21パーセント、同性愛者同士のカップルの61パーセントは、ネット上での出会いから始まったらしく(全人口に占める割合を反映して、絶対数としては異性愛者同士のカップルのほうが圧倒的に多いけれども、同性愛者のあいだでネット上の出会いの割合がこれだけ高いというのは、公の場でのオープンな出会いや交流が限定される同性愛者にとって、ネットという媒体がどれだけ重要な社交の場として機能しているかを示していて興味深い)、さまざまな分野の研究者がオンライン・デーティングに目を向けるのもまあ当然。実験室で人工的に作り出された環境と違って、現実世界での生身の人間模様を分析できるのが、オンライン・デーティング研究の長所。ますます人々の生活の多くがネットを通じて展開されている現在、ネット上の出会いは現実から切り離されたものではなくて、現実そのものだ、とのこと。私が言うのもなんですが、まあそれはその通り。というわけで、オンライン・デーティングのデータを使った研究には、アメリカ最大の科学研究の資金源であるNational Science Foundationもお金を出しているとのことです。ふむふむ。


で、ここで紹介されているデータがなかなか興味深い。たとえば、オンライン・デーティングをしている人の実に81パーセントが、身長、体重、年齢のどれか(または複数)についてプロフィール上で「虚偽の申告」をしているとのこと。女性は平均して8.5ポンド(4キロ弱)、男性は2ポンド(1キロ弱)体重を減らし、男性は半インチ(約1センチ)身長を伸ばしている。自己紹介の文章で嘘を書く人の文章には、一人称をあまり使わない、否定形の文が多い、文章が全体的に短いといった、共通の特徴があるらしい。


私にとって特に面白いのが、オンライン・デーティング上の人種力学。ネットの出会いは、既存の社会の境界を取り除き、人々がより多様な相手と交際するようになるかとの予想を裏切り、オンライン・デーティングでの出会いの圧倒的多数は、同じ人種・民族同士だそうです。自分とは異なる人種の相手ともデートを考える、と言っている人でも、多くの場合は実際には自分と同じ人種の相手としかデートしていない。白人がネット上で声をかける相手の80パーセントは白人で、白人から黒人に声をかける例は3パーセントしかない。逆に黒人から白人に声をかける確率はその10倍。なんとも露骨な人種模様ではありませんか。政治や経済や教育の場で展開される人種についての議論と、人々が求める親密な交流とのあいだには、複雑な関係があることを示唆しています。


また、政治といえば、自分の政治的信条をプロフィールで明言する人の割合は非常に低い、とのこと。『ドット・コム・ラヴァーズ』でも書いたように、私は自分が「政治的に左の人を希望します」とはっきり書いているのに、それをまったく無視したメールがよくくるので驚いたのですが、なるべく幅広く網を広げておこうという人は、政治についてのコメントをしない、ということのようです。「私は保守です」というよりも「私は太っています」という人のほうが多いとか。ひょえー。


このデータを見ると、バカ正直に本当のことばかり丁寧にプロフィールに書いていた自分がマイノリティだったのかと思えてきますが、私が出会った男性のほとんどは、ここに出てくるケースには当てはまらなかったなあ。それは、人種に限らず、マイノリティ同士がしぜんに結びつくという摂理を表しているのかも。