2009年4月5日日曜日

『トウキョウソナタ』

ホノルル映画祭で『トウキョウソナタ』を上映しているので観てきました。不況期の東京の世相をとてもリアリティをもって描いていると思いました。日本のニュースはネットで目を通していますが、最近は本当に悲しいニュースが多いなあと思うものの、日本に住んでいないので経済状況が日常生活にどんなふうな影響をもたらしているのかは間接的にしかわからず、その点で、勉強になるといったらちょっと変ですが、とても実感の湧く映画でした。また、登場人物はみな、それぞれの形で誠意と優しさをもって精一杯生きていながら、そのエネルギーや感情をなかなかいい方向に向けられず、周りの人たちや社会と歯車の合わないことになってしまう、その哀しさと愛おしさをよく伝えているとも思いました。暗く哀しいばかりでなく、そうした状況のなかでの人間の行動の滑稽さも人の優しさも伝わってきます。また、『歩いても歩いても』なんかに通じる、家族の関係がいろんな意味でとても日本的だと思いました。(アメリカ人にはなかなかわかりにくいんじゃないかと思います。)また、出てくる風景に強烈な懐かしさを感じるなー、こういう風景こそが私にとっての東京の風景だよなーと思いながら見ていましたが、駒場東大前の住宅街の実在の家がロケ地だそうなので、なるほど納得。

また、私の関心に沿っていえば、『おくりびと』にしても『トウキョウソナタ』にしても、話のなかでクラシック音楽が周縁的でありながら重要な役割を果たしているのがとても興味深いです。『おくりびと』の主人公がチェロ奏者である必然はなにか。『トウキョウソナタ』でピアノが象徴するものはなにか。(「ピアノの先生」というイメージは、現代でもああいう感じなのか、という点も面白かったです。)面白い。