2008年12月20日土曜日

映画『ミルク』

期末試験・論文の採点はあと一息で終わります。学生さんには失礼ですが、飛び抜けて優秀な一握りの答案や論文を除いては、採点というのはかなり辛い作業です。こちらは一生懸命準備していろいろ工夫して授業をしたつもりなのに、答案を見てみると、重要なポイントが多くの学生にまるで伝わっていなかったことが判明したりして、がっくりしてしまいます。でも、同じクラスのなかにも、ものすごく見事な答を書く学生も何人かはいるので、一部の学生の出来の悪さは、百パーセント教師の責任でもないだろうと思いたいです。

採点の合間に、『MILK』という映画を観てきました。アメリカでは数週間前に公開になった映画で、ハーヴィー・ミルク(Harvey Milk, 1930-1978)という、アメリカで初めて主要な公職に選挙で選ばれたゲイの政治家についての物語です。ショーン・ペンが演じるミルク氏は、ゲイのメッカとして知られるようになったサンフランシスコのカストロ地区でカメラ屋を営みながら、コミュニティ・オーガナイザー、活動家として、サンフランシスコのゲイ・コミュニティを動員していき、何度もの落選にもめげず、ついに1977年にサンフランシスコの市議会員に当選しました。翌年には同じく市議会員のダン・ホワイトに暗殺されてしまうのですが、比較的短い政治生命のなかで、同性愛者の権利を守る法律を通過させたほか、労働組合や高齢者たちとも絆をむすび、実質的にも象徴的にも非常に大きな功績を残しました。彼が暗殺された日の夜には、3万人の住民たちが自然に集まり、灯したろうそくを手にサンフランシスコの通りを行進して追悼の意を表しました。ミルク氏が活動家・政治家として誕生、そして成長していく様子を、ショーン・ペンが実に素晴らしい演技で表していますが、それと同時に、1970年代アメリカの政治史・社会史としてもとても興味深い映画です。同性愛者たちの存在が次第に社会全体に知られるようになっていき、アメリカの一部の都市では同性愛者の権利保護のための法律なども通過するなかで、それに対する反動、そしてキリスト教右派の台頭が、同性愛者の権利を奪う動きも作っていきました。そうした流れのなかで、ゲイの文化やネットワークが、重要な社会運動へと集結されていった様子が、よくわかります。ゲイの男性たちのあいだの恋愛模様や性関係、また、ゲイとして生きることの苦悩も、率直に描かれています。このブログでも何度も言及してきた、先月の選挙のカリフォルニア州のProposition 8のことや、オバマ氏の政治家としての起源がシカゴのコミュニティ・オーガナイザーとしての仕事にあったことなどを考えると、とくにいろいろなことを教えられる映画です。日本では来年ゴールデンウィークに公開になるようなので、その頃まだ覚えていたら、是非観てみてください。

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