2008年12月30日火曜日

Currently Separated: 不動産と離婚

健康保険のために離婚できずに"currently separated"だという人たちがいる、ということについて『新潮45』1月号で書きましたが、最近の不動産下落と住宅ローン危機が、離婚にさらに深刻なインパクトを与えている、という記事が『ニューヨーク・タイムズ』に載っています。共同名義で所有している家の価格が大幅に下落してしまったために、通常であれば離婚に際してその家の取り合いになるところが、残りのローン額よりも価値が下がってしまったその家の処分に関して長く醜い争いが続くというケースが増えているそうです。利益は出なくてもとにかく売ってしまってローン返済は二人で分担する、と合意しても、この不動産市場では家が売れず、仕方がないので法律上は離婚せず、currently separatedの状態のまま、ひとつ屋根の下別々の階に住み続けたり、あるいは一人が家を出てアパートに住んだりして、経済状態が改善するのを待っている、という人たちも少なくないようです。

私の友達にもそういうカップルが一組います。その二人は、最後まで(今でも)友好的な関係だったので弁護士を介した醜い争いにはなりませんでしたが、共同で持っていた家が売れないので、とにかく彼女が家を出てアパートを借り、ローンは彼が一人で負担するようになったものの、それまで彼女が払っていたローンのぶんはどうする、という問題が残り、一年以上currently separated状態を続けていました。最近になって、彼はその家に残り、二人で合意した額を彼が彼女に払って、そのお金を頭金の一部にして彼女が新しい家を買う、ということにまとまりました。この二人の場合は今でも友好的な仲だからよかったものの、そうでなければ、彼が彼女に払う額で相当にもめていたことでしょう。他にも、これは不動産下落以前の話ですが、大学の職員住宅(普通にアパートを借りるよりは家賃がずっと安い)に住んでいた夫婦が離婚することになり、大学職員の夫が家を出て新しいガールフレンド(やがて妻)と新居を構え、前妻はもとの家に残ったものの、彼女はその大学の職員ではないため、離婚してしまったら職員住宅は出なくてはならず、子供と一緒に住む家を探すのにてんてこまい、というケースもありました。こうした話は、結婚している夫婦や、住宅を保有しているケースばかりでのことではありません。ニューヨークのマンハッタンなどでは、賃貸でもいいアパートを手に入れるのは大変なので、一緒に住んでいた恋人同士(もちろんゲイのカップルの場合もある)が別れることになっても、代わりの住処が見つからないとか、今のアパートをどちらも手放したくないとかの理由で、カップルとしては別れながらも一緒に住み続ける、というケースもそう珍しくありません。

経済上の理由で離婚ができないとか、離婚の交渉が長引くとかいったことは、もちろん日本でもいくらでもあるでしょうが、アメリカでは、離婚率の高さと、不動産下落と住宅ローンの崩壊で、事態がいっそう深刻です。

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