2009年3月29日日曜日

ニューヨークより 続き

ニューヨーク滞在の最終日となってしまいました。あまりにも刺激が多く楽しい毎日なので、終わってしまうのは悲しいですが、ニューヨークという街に身を置いてからハワイに戻ると、また感じるものも多いだろうと思います。

昨日はNew York Public Library for the Performing Artsという図書館で午後を過ごしました。これは、ニューヨーク市立図書館の一部で、音楽や演劇を専門にした図書館なのですが、一般閲覧・貸し出し用の書籍やCD、DVDのほかに、さまざまな一次資料がそろった研究施設があって、これがまた素晴らしいのです。私は、ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールについてのリサーチを始めているので(これについては研究がもう少し進んだら詳しく書きます)、クライバーンについての資料を見に行ったのですが、クライバーンが冷戦さなかの1958年にチャイコフスキー・コンクールで優勝して「アメリカン・スプートニック」と言われ大変な騒ぎになった頃の新聞・雑誌記事のクリッピングから、最近のクライバーン・コンクールに関する資料まで、ありとあらゆるものが揃っています。音楽そのものを研究する人には、さまざまな作曲家の自筆の楽譜などもたくさん揃っていて、弾いてみるためにクラヴィノーヴァもあるし、CDやDVDを視聴するためのPCも列をなしていて、しかも誰でも無料で好きなだけ使える。研究者やオタクには夢の遊園地のような場所です。

その他、知人の彫刻家の作品が展示してあるハーレムの美術・音楽学校を見に行ったり、友達の両親が経営しているアジア美術のギャラリーを見に行ったり、ジャズを聴きに行ったりして、刺激たっぷりの毎日です。今日は、友達とブランチをして、夜は泊めていただいているお宅でディナーパーティで、そのあいだにグッゲンハイム美術館に行こうかと思っています。

関係ありませんが、歴史家John Hope Franklin氏が先週94歳で亡くなりました。奴隷制の歴史を初めとする、アメリカの黒人史研究家のパイオニアで、とくに第二次大戦後において、アメリカの歴史観に、黒人の歴史をとりこむという点でたいへん大きな功績を残した人です。自身が黒人の歴史家としてもパイオニアで、人種隔離されていた南部歴史協会で黒人として初めて論文を発表したり、黒人初のアメリカ歴史協会会長となったりしたほか、同僚や後輩、学生ともとても温かく指導や共同研究などをするとして人望を集めていた人です。今ではマイノリティや女性などの歴史や視点が「メインストリーム」のアメリカ史に取り入れられるのは当たり前になっていますが、その布石を敷いた人物です。