笹川自民総務会長が、「女性議員はあまり上品でない」と発言したというニュースを読みました。去年、ナンシー・ペローシ米下院議長のことを指して、「下院議長が女性だから金融安定化法案が否決となった」という意味の発言をしたときにも、どうしてこういう発言をする人がこういう立場にいて、しかも発言が世間に知られてもその立場から降ろされないのだろうと仰天しましたが、今回もまたしかりです。何度もこうした発言が続くということは、たまたま言葉の使い方を間違って誤解を招くような発言をしてしまったのではなく、女性の能力や尊厳についての基本的な認識が欠如しているということでしょう。アメリカだったら、このような事件があったら政治家はほうぼうから糾弾を受けて即刻辞任となります。各法案に関する政治家の立場やあらゆる言動をモニターする団体や機関がいろいろあって、なにか問題が起こればあっという間に大騒ぎになります。もちろん日本にもそうした活動をする団体はあるでしょうが、それらの活動が政治家にアカウンタビリティを求める市民の動きにもっとつながっていけばいいのにと思います。
オバマ政権の国家経済会議委員長となったローレンス・サマーズ氏がハーバード大学総長だったときに、「科学の分野に女性が少ないのは素質の差によるのではないか」という意味の発言をしてたいへんな騒ぎになり、他の批判とも重なって教授会で総長不信任案が可決され、辞任にいたったといういきさつがあり(『現代アメリカのキーワード 』303−307頁参照。)、サマーズ氏がオバマ政権に指名されることには、かなりの批判もありました。
ハーバードといえば、ハーバードで医学と人類学の博士号をとった49歳のジム・ヨン・キム氏が、ダートマス大学の総長に任命されて話題になっています。アジア系アメリカ人で初のアイビーリーグの大学の総長です。「モデル・マイノリティ」というレッテルが貼られがちなアジア系アメリカ人は、科学や工学などの分野でとくに活躍が目立ちますが、東海岸のエスタブリッシュメントであるアイビーリーグの総長といった立場にアジア系アメリカ人がつくのは、やはりかなり画期的なことです。ちなみに、私の母校であるブラウン大学がルース・シモンズを総長に任命したときに、黒人女性初のアイビーリーグ総長として話題になりました。サマーズ氏の後任にハーバード総長に任命されたのは、ドリュー・ギルピン・ファウストという、南北戦争期を専門とする女性の歴史家です。トップの顔と組織全体の風土は必ずしも一致しないでしょうが、トップにどういう人をおくかというのは、実質的にも象徴的にもやはり大きな意味をもっていると思います。