2009年11月17日火曜日

服部崇『APECの素顔』

札幌に行ってきたところなのでそれと比べるとずっと暖かいものの、東京もずいぶん寒くなりました。冬の寒さは東京よりずーっと厳しいニューイングランドやニューヨークに何年も住んでいたこともあるのですが、今では身体がハワイの気候に慣れている私には大変です。(ニューイングランドでの生活の四年目くらいには、外が零度くらいだと、「なんだ、そんなに寒くないじゃん」などと言うようになっていたのを思い出します。慣れというのはすごいものです。)なんといっても、日本は家の中が寒いのには参ります。アメリカでは寒い地域でも家のなかはセントラルヒーティングなので暖かい(そのぶんずいぶんとエネルギーが浪費されているのでしょうが)ですが、日本は家がスコスコだし、暖房を入れても寒い!北海道のような厳寒地はさすがにセントラルヒーティングが普及しているようですが。

さて、今日は私の友達の著書をご紹介します。服部崇著『APECの素顔 —アジア太平洋最前線』。出版ほやほやです。経済産業省から三年間の出向で、シンガポールにあるAPEC(「アジア太平洋経済協力」)事務局にプログラム・ディレクターとして勤務した経験をもとに、APECという組織や、シンガポールでの暮らし、そして仕事を通じて触れたアジア太平洋地域の人々や文化について紹介した本です。私はAPECという名前は知っていたものの、実際にどんなふうに運営されていてどんなことをしている組織かはほとんど知らなかったので、いろいろと興味深いことを学びました。たとえば、APECでは、参加国それぞれのことを「国」といわずに「エコノミー」と呼ぶんだそうです。APECというのは経済圏としてのコミュニティだからまあそういうものかとも思いますが、なぜそういうことになったのか、そして国といわずにエコノミーということで参加国や地域全体の意識にどのような意味をもたらしているのか、そのへんがもっと知りたくなってきます。また、APECは単なる自由貿易圏としてでなく、互いの国内制度の相互調整にも踏み込むような「深い統合」を目指すべきだという論もあるそうですが、そうした方向に進むとなると、超国家的地域コミュニティと、それぞれの国家の論理やナショナリズムがどのように関係していくのか、「国内制度の相互調整」には経済体制だけでなく人権や言論といったことも含まれるようになるのか、などなど、質問したいことがいろいろ出てきます。なにも知らないと質問もないけれど、ちょっと知るといろいろ質問が出てくるものですね。文章も読みやすく、組織の話だけでなく同僚とのやりとりなど人間的な話題が多いので、親しみをもって読むことができます。よかったら手にとってみてください。友達が書いた本だけに、私としてはパーソナルな視点からもなかなか興味深く、なるほど私の友達が『ドット・コム・ラヴァーズ』を読むときにはこういう気持ちで読むのかしらん、などと思いました。(といっても、この本は、『ドット・コム・ラヴァーズ』とは内容も性質もまるで違うものです。念のため。)