2009年11月3日火曜日

中国の本屋






文化の日にちなんで(?)、北京で見たもののうち文化的な話題を少し。

北京で行った場所のうちもっとも面白かったところのひとつが、大山子798芸術区。かつて工場(残っている設備や機械からして、重工業だったのだろうと思います)だった場所を改装して、ギャラリーやアート・スタジオ、レストランやカフェなどの集まる芸術空間にしたものです。とても大きなスペースで、私がいた数時間に見たのは全体のほんの十分の一くらいだったらしいですが、それでも大いに楽しめました。アメリカにも似たような意図の芸術スペースはありますが(マサチューセッツ現代美術館はその一例)1950年代の共産主義全盛時代に産業複合施設として活気のあったらしい空間の遺物が、今ではポストモダン芸術の舞台となり道具となっている、そのコンビネーションがなんとも興味深いです。クレーンや線路を前に結婚の記念写真を撮影するカップルが多いらしく、私が行ったときにも一組が撮影の最中でした。また、工場の内部には今でも「毛首席万歳」といった赤字のスローガンが残っており、それが今ではオシャレなアート空間となっているのも面白いです。

忙しく動き回っていたので、プライオリティの上位に入っていなかったショッピングはまるでしなかったのですが、最終日に食事をしに行った王府井という、東京の銀座のようなエリアにある、大きな本屋さんに入ってみました。言葉が読めないのだから、本屋さんに行っても仕方がないといえばその通りですが、本屋さんというものがどんな風なのかをちょっと覗いてみるだけでも私のような人間には面白いし、漢字文化のおかげで、どんな本が並んでいるのか少しはわかるのがありがたいです。紀伊國屋のような、何階もある大きな本屋の一階をちょろっと見ただけなのですが、本がどんな風に分類されているかとか、どんな本が売れているらしいかとかを見るだけでも、やはりとても興味深かったです。

たとえば、「マルクス・エンゲルス・レーニン・スターリンの思想」という特別コーナーがあり、書棚二つくらい充てられていました。なるほど。『資本論』の翻訳や、思想史や哲学や経済学の観点からの研究書らしき書物が並んでいました。そして、そのすぐ隣には、「成功学」というコーナーがあるのが面白かったです。そのふたつのコーナーが隣同士であることの論理を知りたいところです。また、「男性読物」と「女性読物」というコーナーが隣同士であり、本のデザインの色使いからして明らかに違っている(やはり女性読物はピンクが多く使われている)のです。そして、中身が読めないのであくまで漢字のタイトルやイラストから推測するだけですが、「お金持ちの男をつかまえて嫁になるための本」とか「完璧な女性になるための何か条」みたいな本がかなり沢山並んでいるのも面白かったです。また、地図を作る仕事をしている友達へのお土産として地図を買おうと、地図コーナーにも行ってみましたが、中国で売っている世界地図は、なるほど中国や太平洋が中心となっていて(ハワイ島からミッドウェイにいたるハワイ群島もかなりしっかりと載っている)、アメリカ合衆国などは右のほうになんだかずいぶん歪んだ形でぐちゃっと押しやられているのが面白いです。

「売れている本」らしきコーナーには、大前研一氏の本も並んでいました。日本でもかなり売れているらしいオバマ氏の演説集らしき本も並んでいました。中国の人々が、オバマ氏をどう見ているのか、友達に聞いてみるべきでした。

オバマ氏といえば、先週末のニューヨーク・タイムズ・マガジンに、オバマ夫妻の関係についての長文記事が載っています。以前から、この夫婦は、これまでのホワイトハウスのイメージを大きく塗り替えるとして話題になってきました。クリントン夫妻も、それまでの大統領夫妻とはずいぶん違う存在でしたが、オバマ夫妻はそれともまただいぶ違うイメージ。ミッシェル夫人のカッコ良さ、強さ、賢さに加えて、なにしろ夫妻が今でもお互いに恋をしているのが明らかだ、というのが新鮮なのだと思います。「新潮45」の連載で説明したように、to love someoneとto be in love with someoneというのは違うのであって、オバマ夫妻の場合は、長年の結婚生活を経た今でもなお、in love with each otherであるということが、お互いを見る視線やふたりでいるときのちょっとした仕草、ふたり一緒にインタビューされているときの会話などから伝わってくるのです。そうした恋愛感情を、弁護士としての仕事や社会運動、そして政治家としてのキャリアを築くなかで維持していくことはたやすいことではないのは当然で、とくに自分のキャリアをもったミシェル夫人が、オバマ氏が政治家となったことをどのように考え、それがふたりの関係にどんな影響を及ぼしたか、ということなど、いろいろ考えさせられるいい記事です。やはり、いい関係を続けていくためには、政治と同じくらい、あるいはそれ以上の努力とコミュニケーションが必要なのでしょう。

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