2010年3月13日土曜日

サミュエル・バーバー生誕百周年

数日前まで、本の原稿を仕上げるのに、一週間ほど電話ですら誰とも話をせず家にこもりっきりでせっせと仕事をしていました。この私が一週間も人としゃべらないでいられるものなんだと、自分で感心してしまいました。とは言っても、メールとかFacebookとかはやっていたので、まったく外界から遮断されていたわけではないのですが、まったく声を出さないでいるというのも不思議な感覚なので、ふと私にはまだ声があるのかしらと、一人で「あー」とか言ってみたりしました。(笑)原稿は無事に書き終えて(クライバーン・コンクールについての本です。刊行スケジュールが決まったらもちろん宣伝を兼ねてお知らせします)、一週間の家ごもりを取り返すため、ここ数日は、美容院に行ったり日帰り温泉に行ったり飲み会に行ったり買い物に行ったりして過ごしています。

原稿を書いているあいだ、あまりにもピアノ音楽のことばかり考えていたので(クライバーン・コンクールの演奏ビデオは今でもすべてインターネット上で見られるので、何度も何度も見聴きしていました)、ちょっとは違うものを聴こうと思って、Carolina Chocolate Dropsという、バンジョーを初めとするアメリカ南部のアフリカ系アメリカ人の伝統音楽をアレンジするバンドの最新アルバム、
Genuine Negro Jigを聴いています。これはすごーくいいですよ!ナショナル・パブリック・ラジオのポッドキャストで彼らのインタビューがあったのを聴いて、早速アルバムをダウンロードしたのですが、思わず何度も聴き直してしまうくらいいいです。

で、クラシック音楽からはちょっと離れていようとも思っていたのですが、今年はアメリカの作曲家サミュエル・バーバーの生誕百周年で、ナショナル・パブリック・ラジオでいろいろな関連番組をやっていて、ついつい聴いてしまいます。バーバーは私がとても好きな作曲家で、Souvenirsというピアノ組曲のなかの数曲とは、しばらく前にずいぶん格闘しました。(あまり演奏されない曲なので、知らない人が多いのではないでしょうか。)バーバーは、『プラトーン』を初めとする数多くの映画にも使われた『弦楽のためのアダージオ』があまりにも大ヒットしてしまったために、他のたくさんの作品がかえって注目されなくなってしまったとか、いわゆる芸術音楽の作曲家としては真剣に取り扱われなくなってしまったりとか、複雑なキャリアをもった人でしたが、私は彼のピアノ音楽も、ヴァイオリン協奏曲も、チェロ協奏曲も、歌も、とっても好きです。で、その『弦楽のためのアダージオ』ですが、なぜこの曲がここまでポピュラーになるほどの情感的反応を人びとにもたらすか、ということを音楽的に解説した番組があります。短いですが、よくわかるし、解説者の曲に対する愛情も伝わってくるし、とてもよいです。これを聴くと、「もう一度『アダージオ』を聴いてみよう」という気になりますよ。