2010年3月14日日曜日

同性愛が精神病でなくなるまで

今日、加藤周一についてのドキュメンタリー、「しかし、それだけではない」を観に行こうと友達と渋谷で待ち合わせたにもかかわらず、劇場に行ったら「その映画は先週で終わりました」と言われ、ガーン。代わりにランチに加えて2軒でお茶をしたので、ゆっくりおしゃべりができてよかったのですが、ちょっと悲しいです。(ちなみに渋谷では4月にアンコール上映があるらしいです。)

渋谷への往路、iPodで、前にもこのブログで言及したナショナル・パブリック・ラジオの番組This American Lifeを聴いていたのですが、81 Words (81 Wordsというのは、同性愛を精神疾患の一種と定義した精神医学会の文書に使われた単語数を指す)というタイトルのエピソードが、リサーチとしても語りとしてもなかなか素晴らしい。1973年にアメリカ精神医学会が、「同性愛は精神病ではない」と宣言したことによって、同性愛者の社会的地位や取り扱いに大きなインパクトをもたらしたのですが、当時は精神科医の実に9割以上(自身が同性愛者であった精神科医も含む。ただし当時は、同性愛者は精神科医として臨床にあたることは禁じられていた)が同性愛は精神病の一種だと信じていたという思想的・文化的風土のなかにあって、どういう経緯で精神科医たちの見解が変わり、医学上の定義が正式に変えられることになったのかを解き明かす物語です。一人の英雄的存在がそうした変化を可能にしたわけではなく、いろいろな人物や団体の勇気ある行動や、リーダーの地位にある人物のオープンな姿勢と決断など、さまざまな要因が流れを作った結果だということがわかります。また、同性愛のもつ意味や社会的地位などといった、政治的・社会的・道徳的な問題について、科学がどういった役割を果たすかということについても、考えさせてくれます。話の肝心な部分がハワイで展開される、というのも私にとっては興味深いです。良質なラジオ・ジャーナリズムの醍醐味・面白味が味わえますので、ぜひ聞いてみてください。