2010年7月31日土曜日

「未離婚」の人々

30日(金)に、『性愛英語の基礎知識 』『ヴァン・クライバーン 国際ピアノコンクール』の合同出版記念パーティをしました。夜中の1時過ぎまで大いに盛り上がって、たいへん楽しい会となりました。参加してくださった皆さま、ほんとうにありがとうございました。友達やお仕事仲間が、それぞれの人生の段階で自分がやっていることを、きちんと見ていてくれているということほど、人生において強い武器はない、ということを改めて実感する一夜でした。

さて、今日アメリカではチェルシー・クリントンの結婚式の話題でもちきりのようです(日本の読者にとっては、メソディスト派クリスチャンの新婦と、ユダヤ教の新郎が、それぞれの宗教伝統を取り入れた形式の結婚式をおこなった、ということはなかなか面白いのではないでしょうか)が、オンライン版ではそのおめでたいニュースのちょっと下に、The Un-Divorced、すなわち「『未離婚』の人々」というタイトルの記事があります。

『性愛英語の基礎知識 』のなかで、"currently separated"つまり「現在別離中」という表現について説明しましたが、これはその「現在」が何年間にも、ときには何十年にもわたる夫婦(?)を指すものです。一緒に生活していくことは無理だとの結論に至った夫婦が、別々に暮らし、多くの場合それぞれ新しい恋人やパートナーを見つけ、"move on"(これも『性愛英語』に出てきます)し、事実上は別れているにもかかわらず、さまざまな理由から法的な離婚手続きをとらないまま長期間が経過する。そうした「未離婚」の状態で、とくに困ることもなく、むしろそのままにしておいたほうがメリットが多い場合もあるので、その状態が何十年も続くこともある。一緒に暮らしていないし、別のパートナーがいたりするのだから、知人友人はてっきりもとの夫婦は離婚済みなのだと思っている場合もあるし、そう思われていてとくに困ることもない。逆に、別々に暮らしてはいるけれど、きわめて友好的な関係で、二人でさまざまな社交の場に出かけていく「夫婦」もある。フィランソロピストのウォーレン・バフェットなどは、妻と1977年に「別離」したまま2004年に彼女が亡くなるまで離婚はせず、その間ずっと自分の新しいパートナーである女性と一緒に暮らしており、三人は仲がよく、三人の連名で友人知人にホリデー・カードを出すことなどもあったそうです。

関係をもとに戻すつもりがないのなら、いっそのこときちんと離婚してしまったほうがすっきりしてよさそうなものを、こうした人々が敢えて「未離婚」の状態を長期間続けている最大の理由は、財政的なものだということです。とくに、不況下では共同名義の不動産を売っても損をするばかりだし、友好的な別れなのであれば、わざわざそれぞれが弁護士を雇って財産分与を決めるのは精神的にもお金の面でも面倒である。また、健康保険、年金、税金などにおいて、法律上は結婚していたほうが有利に働くことが多いので、とくに離婚の必要に迫られていなければ、「未離婚」のままにしておく男女が多く、はじめは当面の処置のつもりでしていたことが、あれよあれよという間に何十年もたってしまう、ということがあるようです。「子どものため」という理由で「未離婚」の状態を続けるケースは驚くほど稀だそうですが、実際に別居しているのであれば、子どもの精神状態にとっては法的に離婚していてもしていなくてもそれほどの違いはないと思われる(私の友達にもそういうケースがあります)ので、それはまあ納得がいくことでもあります。もちろん、「未離婚」が、単に離婚に伴う係争に直面したくないためにそれを先延ばしにした結果であるというケースも少なくありませんが、敢えて「未離婚」をライフスタイルとして選択している人が多いというのは、なかなか興味深いことではあります。

私は今、リリー・フランキーの『東京タワー―オカンとボクと、時々、オトン 』を読んでいるのですが、ここのオカンとオトンの関係が、まさに「未離婚」ですね。

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