私が是枝裕和監督のファンであることはこのブログで以前にも言及したと思いますが、新作の『奇跡』を今日観てきました。さすがの是枝監督!前作の『空中人形』とも、子どもを扱った『誰も知らない』とも、それ以前の他の作品とも全然作風が違う映画なのですが(『歩いても歩いても』とは、登場する役者がだいぶ重なっていることと、家族ものであるという意味ではけっこう共通するところがありますが、核となる物語はだいぶ違う)、今回もやはり素晴らしかったです。九州新幹線開通とタイアップしてもっと大々的な「新幹線映画」としてマーケティングされるはずだったのが、震災の影響でずいぶんと違った状況になった、と聞きました(今日一緒に観に行った友達に教えてもらいました、ありがと〜)が、私としては、そんなJRの宣伝映画のようになってしまうよりも、このほうがずっと作品としてよかったはずだと思います。子どもの兄弟ふたりが主人公なのですが、とにかくこのふたりの役を演じている前田航基・旺志郎兄弟が素晴らしいし、他の子役も、子どものひたむきさや無邪気さだけでなく、子どもならではの冷静さや直截さや計算高さや間抜けさを、見事に演じきっています。純粋な子どもが離れた家族を元に戻そうとして懸命に走り回る、というだけなら単におセンチなお涙頂戴で終わるところが、そうではなく、子どもたちの小さな大冒険を通じて、子どもたちの成長や、彼らをとりまく大人たちの大人らしさも大人げなさが、絶妙な距離感で描かれています。
是枝監督の作品を観るといつも、日本の風景や人と人の距離感の捉え方に、とても強い共感をおぼえ、ハワイで観るときは(私はこれまでの是枝監督の作品のほとんどはハワイで観ています)「そうそう、日本っていうのはこういうところなのよね〜」と、無性にホームシックになります。是枝監督は海外生活をしていた人なのかしらんと思ったりもしましたが、そういうわけではないようです。私は是枝監督に会ったことはないし、この先も会うことはないだろうと思いますが、是枝監督にプロポーズされたら即座に「はい」と言ってしまうであろうと思うくらい、いつも彼の作品の根底に流れる人間性や価値観や社会観に共感します。でも、お子さんもいるらしいし、プロポーズされる見込みはまるでなし。
ちなみに、今日NHKでやっていた、岡本太郎を支えた女性、敏子さんという人物についての番組もなかなか感動的でした。初めのうちは、「偉大な男性の陰には、偉大な女性がいるってことね」などと思いながら軽い気持ちで見ていましたが、番組が終わるころには畏敬の念に変わり、愛情の形はいろいろ姿を変えても、ひとりの人物をあそこまで信じきり、その人物の可能性を実現することに自分の生涯を捧げることができたら、なんと幸せなことだろうと思うようになりました。