今日、残り6人の準本選の演奏が終わり、1時間ほどの審査集計を経て、6人の本選出場者が夜も更けた11時半に発表されました。結果から先にご報告すると、以下の6人が明後日から始まる本選に出場します。
Sean Chen
Fei-Fei Dong
Vadym Kholodenko
Nikita Mndoyants
Beatrice Rana
Tomoki Sakata
ここ2日間で、前半での演奏と比べて私の評価がずいぶん上がったり下がったりした人がいたので、12人の演奏が終わった時点での私の本選出場者予測は、Chen, Deljavan, Dong, Gillham, Kholodenko, Ranaだったので、6人中4人当たっていたわけですが、なんといってもAlessandro Deljavanが本選出場を逃したのが、涙が出るほど悲しいです。今日のソロリサイタルでも、いつもの通り、彼独自の音楽を魂をさらけ出して表現してくれて、それはいわゆるクリーンな演奏とは違うものだし、個性的なあまり、コンクールという場での評価はかえって低くなる、という可能性もあるとは思っていましたが、彼ほどの芸術家を本選に進ませないということはありえないと信じていました。2009年のコンクールのときは、辻井さんやハオチェン・チャン、ヨルム・ソンに注目・応援はしていたものの、今回は、すっかりDeljavanに個人的な入れこみを感じてしまい、演奏の最中も自分のほうが手に汗を握り、発表のときも本当に心臓がドキドキして、彼の名前があがらないまま終わってしまったときは、心身ともにぐったりしてしまいました。後で、ハグをしに行くと、「いいんだよ、昨日も言ったみたいに、僕はコンクールではいつも落とされるんだから」とさらっと言っていましたが、演奏家としてのキャリアをコンクールに賭けている彼にとって、これはとても大きな落胆であることは間違いありません。「審査員はともかくとして、私にとってはあなたは一番のヒーロー。これからも、あなたという人間であり続けて、あなたの音楽を演奏し続けてね」と言うと、私の手をしっかり握って「ありがとう」と言っていました。(涙)もしかすると、彼ほどの個性をもった芸術家は、コンクールという形式には実際に向いていないのかもしれません。コンクール以外に、彼が演奏家として世界にデビューする道がなにか見つかることを、強く願ってやみません。ポゴレリチの演奏が奇抜すぎるとして、ショパン・コンクールで落選したときに、アルゲリッチが抗議して審査員を辞任した、という騒ぎがありましたが、今回は、辞任する審査員こそいないかもしれませんが、彼の芸術性を高く評価して彼のキャリアを応援してくれる審査員がひとりでもいてくれればいいのですが。
そのいっぽうで、阪田知樹くんが本選に進出したのは、おおいなる快挙!予選の演奏を聴いて、このままの勢いで行けば本選まで行くのではないかという気はしていたものの、準本選ではさすがに他の出演者のレベルもそのぶん高いので、本選に入るかどうかボーダーラインくらいかなあ、と思っていました。19歳で、こんなに大きな国際舞台に初めて出て、一気に本選まで行くなんて、本当にすごい!やはり、若いということは、物怖じせず、余計なことを考えずに、コワいものなしで伸び伸びと自分の持っているものを出せる、ということでもあるんだろうなあ、そして、そういう素直な演奏こそが、聴衆そして審査員の心を打つんだろうなあ、と感じさせる結果です。もしも阪田くんが本選に進まなければ、明日か明後日にでもインタビューをさせてもらおうと思っていたのですが、こういう状況になると、これからコンクール終了まで、コンチェルトのリハーサルや本番が立て続けに入るので、お話を聞かせていただく時間があるかどうかわかりませんが、また追ってご報告します。
他にもいろいろ書きたいことはあるのですが、Deljavan落選のショックで、ワインを飲んでベッドに倒れ込みたい気分なので、今晩はこれにて失礼します。