2013年6月8日土曜日

第14回クライバーン・コンクール、いよいよ大詰め

本日は本選第3日め、本選出演者6人のうち3人の2回目のコンチェルトの演奏がありました。明日の午後、残りの3人の演奏があり、その後まもなく結果が発表になります。今日と明日は満員御礼だそうで、ホールも美しく着飾った人たちでいっぱいになり、たいへん盛り上がった雰囲気です。ホール前には、例年話題のピンクのキャデラック(拙著をご参照ください)も登場。明日は結果発表の後で、クロージング・ガラ・パーティがあるので、今日よりさらに、タキシードやイブニング・ドレス姿の人たちが増えるはず。

今日演奏したのは、Nikita Mndoyants, Fei-Fei Dong, Beatrice Ranaの3人。それぞれ、モーツァルト第20番、ベートーヴェン第4番、プロコフィエフ第2番を演奏しました。

Mndoyantsのモーツァルトは、全体としてよくまとまっていて、彼のプロコフィエフの演奏よりずっとよい出来でした。彼が演奏したカデンツアは、私は聴いたことのないものでしたが、次々に変調する、ロマン派以降の音楽のような、不思議なカデンツアでした。Fei-Fei Dongのベートーヴェンは、一昨日のラフマニノフと同様、とてもよい箇所もあったけれど、無理をして弾いているように聴こえる部分や、やたらと叩きつけているように聴こえる部分や、テンポの変化が不自然に感じられる部分があって、ばらつきのある演奏でした。彼女は、予選第1回のリサイタルが一番よかったので、もちろん実力は存分にあるはずですが、他の演目と比べるとコンチェルトの準備がやや不足していたのに加えて、コンクール途中でスタミナが切れてきたのかもしれません。彼女は、準本選の演奏が一番最後で、その夜遅くに本選進出が決まり、興奮もさめやらぬまま、翌日朝一番でオーケストラとのリハーサルをしなければいけなかったので、疲れてもまあ当然でしょう。彼女が3位以内に入賞することはないと思いますが、これをステップに、さらに高いレベルに上がる音楽家となってくれることを期待します。

そして、今日のスターはBeatrice Rana。一昨日Mndoyantsが弾いたのと同じプロコフィエフの第2番でしたが、これはもう明らかに彼女の演奏のほうが数段も上でした。昨日のKholodenkoのプロコフィエフ第3番とどちらがよかったかというと、2番と3番では作品の性質がかなり違うので、これは比較がなかなか難しい。Kholodenkoのほうが、火花の散るような切れと激しさがあったのは確かだけれど、それは演奏よりも曲による部分が大きいかもしれません。2番のほうが、ダークな音楽性があって、Ranaは単なる迫力だけではない、コントロールされたなかに深い芸術性を表現していたと思います。彼女は、顔や身体を大きく動かして演奏するピアニストとは違って、演奏中もかなりクールな表情を保つ人ですが、だからこそ、彼女の微妙な表情に、深い次元での音楽的理解が表れているように思います。聴衆も、昨日のKholodenkoの演奏の後と同じくらい熱く長い拍手をしていました。演奏中はコントロールのきいた表情をしている彼女も、終わってからはとても嬉しそうな笑顔をしていました。コンサート終了後、楽屋口に会いに行きましたが、多くのファンが集まっているなかでも、ひとりひとりに丁寧に話をする、とても感じのいい女性です。


まだ明日の3人の演奏が残っているのでなんとも言えませんが、巷では、優勝はKholodenkoかRanaだろう、という説が一般的。私もそれは間違いないだろうと思います。ふたりのうちどちらが1位になるか(前回は、ハオチェン・チャンと辻井伸行さんが1位を分けましたが、1位をふたりが分けるというのは、いろいろな意味で不都合なので、今後は1位をふたりが分ける、ということは絶対にしない方針だそうです)は、うーむ、難しい。Kholodenkoの室内楽や昨日のプロコフィエフは、文句を言わせず群を抜いて素晴らしかったけれど、コンクール全体を通して考えると、私はRanaのほうが幅広い音楽性を披露したような気がします。というわけで、とりあえず、今の時点での私の予測としては、1位Beatrice Rana、2位Vadym Kholodenko、そして3位がSean Chenまたは阪田知樹くん、といったところ。はてさて、どうなるでしょうか。

明日いよいよ最後の演奏そして結果発表。ぜひともウェブキャストでごらんください。

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