2009年2月16日月曜日

ラナイ島





土日にラナイ島に行ってきました。ラナイ島とは、ハワイの主な六島のうち一番小さな島で、現在の人口は三千人強。20世紀のほとんどは、ドール経営のパイナップルのプランテーションで島全体が成り立っており、ラナイ島は世界最大のパイナップルの生産・輸出元だったのですが、生産コストの上昇とともにパイナップル農業の中心は世界の他の場所に移り、ラナイのプランテーションも閉鎖となりました。現在ではそれに代わって、1990年代にオープンしたフォーシーズンス・グループのふたつの高級リゾートホテルが主な産業となっています。ラナイの農業が終わりにさしかかっていることが明らかになったときに、プランテーションの労働者たちを組織していた労働組合International Longshoremen and Warehousemen's Union (ILWU)は、労働者たちが生活基盤を失わないために、従業員用住宅を低価格で従業員に売却すること、そして、プランテーション従業員がリゾートの仕事に就けるように研修するという条件を、開発業者側と交渉して勝ち取ったことで、プランテーション閉鎖が島民の生活に決定的な打撃とならずに済んだ、という歴史があります。

私は12年間のハワイ生活で、ラナイに行ったのは今回が初めてなのですが、それは、なにしろこの超高級リゾートの他には泊まるところがないからです。(あとひとつホテル・ラナイという小さな個人経営があって、庶民はここに泊まるらしいです。)このリゾートは一番安い部屋でも一泊400ドル弱もするので、私なぞにはまるで縁のない世界で、これから先も行くことはないだろうと思っていました。今回行くことになったのは、私の仲良しのクラリネット奏者(『ドット・コム・ラヴァーズ』の「マイク」)が、そのリゾートホテルで室内楽のコンサートをすることになり、彼の同伴ということで行けばタダで一緒にそのホテルに泊まれるので、ピアニストの譜めくり役も兼ねて、くっついて行くことにしたのです。くっついて行くだけなのでなんの下調べもして行かなかった私は、てっきり空港からレンタカーでホテルに行くのかと思っていたのですが、そうではなく、かわいらしい空港に降り立つとそこにはフォーシーズンスのシャトルバスが待機しており(ラナイの空港に降り立つ人のほとんどすべてはフォーシーズンスに泊まるということ)、それに乗ってリゾートに着くと一人一人にレイとおしぼりとパイナップル・ジュースが出されます。チェックインの列に並ぶこともなく、豪勢な山小屋風のデザインのロビーのソファに座って待っていると受付の係の人がこちらにやってきて手続きを済ませてくれます。以後滞在のすべてがすべてその調子で、なにからなにまで至れり尽くせりのサービス、そして隅々のディテールまで配慮の行き届いたアメニティに、目がくらむようでした。チェックインするときに、「ベッドがふたつの部屋をお願いできますか」と聞いたところ、なんて変なことを聞くんだという表情で、「そういうお部屋はありませんが、よろしければ追加の簡易ベッドを部屋にお運びします」という返事をされたので、カップル以外の人はこういうところには泊まらないのでしょう。まあキングサイズのベッドは三人でも寝れるくらいだし、マイクはゲイだし、別にいいです、ということになったのですが、滞在二日間ずっと、ホテルのスタッフはみな私のことをMrs. Anderson(マイクの本名の名字はAndersonという)と呼んでいて可笑しかったです。それにしても、朝食が一人35ドルもするし、もうひとつのリゾート(ふたつのリゾートのあいだを往復するシャトルバスも走っていて、宿泊客は行ったり来たりしてゴルフやビーチや食事を楽しむらしい)のレストランでの夕食は一番安いコースが60ドル、かといって、もっと安く済ませようと思っても町に他のレストランがあるわけでもないので、すべてはそのリゾート内で済ませる仕組みになっています。本物のゴルフやミニチュア・ゴルフ、芝生のボーリング、プールなどに加えて、ビリヤードだの各種ゲームだのが揃っているので退屈しないようになっているのですが(なにしろ室内楽コンサートもあるし)、こういう環境でゆっくりと休むことを楽しめるためには、短期間のうちになるべくたくさんの名所を見るという観光スタイルをきれいさっぱり忘れなければいけません。私と「マイク」は、二日目はハイキングに行きました。途中野生の鹿を二頭目撃しました。残念ながら鹿の写真はとり損ないましたが、何枚か写真を。