2009年2月23日月曜日

ある公爵夫人の生涯

ある公爵夫人の生涯(The Duchess)』を観ました。日本では今年4月公開予定らしいですが、こちらでは去年公開で劇場では見損なったのでDVDで観ました。18世紀イギリスに実在したデヴォンシャー公爵夫人の生涯を描いた小説を映画化したものですが、いやー、これはすごい。見終わってぐったりするくらい感情移入してしまいました。主演のキーラ・ナイトリーは『高慢と偏見』などの歴史ものをいろいろ演じていますが、これはそのなかでも一番すばらしい演技だと思います。(ちなみに私は、『つぐない』は全然いいと思いませんでした。イアン・マキューアンの原作はいいのかも知れませんが、映画のつくりとしてはあまりにもリアリティに欠けると思いました。)詳しい話の筋は明かしませんが、溌溂として好奇心と情熱に満ちた若い女性が、18世紀ヨーロッパの貴族社会のしきたりと女性の地位に縛られるなかでいろいろなものを捨て、また、母親としての愛情と役割を選択するうえで自分の大事な一部を犠牲にする、その過程で、諦念というだけでは言い表すことのできない、悲しみや悔いや切なさをすべて受け止めた貫禄のある女性として年老いていく(といっても、年老いるところまでは映画のなかでは出てきませんが)その様子を、見事に演じていて、溜息が出ます。そしてなんとも複雑なのが、エリザベス・フォスターという女性の存在。貴族階級に属していながら女性であるがゆえに根源的な自由をもたないもの同士、彼女はデヴォンシャー公爵夫人と親友関係になるのですが、やがて彼女は自分の子供との面会権を手に入れるために、親友の夫である公爵の愛人となってしまう。その二人の女性のあいだの、なんとも不可解なようでいて考えてみるとすごく納得がいくような、複雑な愛情が見どころのひとつです。前半で男性たちの政治談義に参加して、「適度な自由なんて存在しないと思うわ。自由という概念は絶対的なもので、愛情と同じように、自由はあるかないかのどっちかじゃないかしら」と発言するのですが、その台詞を考えながら残りを観ると、実に考えさせられます。このデヴォンシャー公爵夫人は、故ダイアナ妃の遠い親戚であるらしいことも考えると、ますますうなってしまいます。