新潮社の季刊誌『考える人』春号が4日発売になりました。「ピアノの時間」という特集です。私は「私の好きなピアノ・アルバム ベスト3」というアンケートに答えただけなのですが、音楽、とくにピアノの好きなかたは手に取ってみてください。ちなみに、このアンケートでは、ホロヴィッツだのリヒテルだのグレン・グールドだの内田光子だのといったところは他にもたくさん挙げる人がいるだろうと思い、私が『Musicians from a Different Shore』のリサーチ・執筆の過程で個人的に知り合いになった、才能あふれる若手のアジア人・アジア系アメリカ人女性のCD三枚を選びました。以下の通りです。
Scarlatti: Complete Keyboard Sonatas, Vol. 8 演奏・Soyeon Lee
韓国出身のSoyeon Leeは、人柄・音楽ともに、明るさと深みを同時に備えている、とても輝いているピアニストです。アジア人として、また女性として西洋クラシック音楽を追求することについての考えを、とてもじっくりと語ってくれました。このCDはバロック音楽の幅の広さを知らせてくれます。
Georg Tintner: Violin Sonatas; Chopin Variations 演奏・Helen Huang (ピアノ) Cho-Liang Lin(ヴァイオリン)
日本生まれ、台湾系、ニューヨーク育ちのHelen Huangは、十歳でコンサート生活を始めたいわゆる「天才少女」でしたが、このCDはそうしたレッテルをはるかに超越した成熟した芸術性を見せています。共演しているのは、世界的に活躍するヴァイオリニストのCho-Liang Lin(彼もMusicians from a Different Shoreにインタビューの抜粋が出てきます)。
Etudes, Seriously 演奏・平田真希子
平田真希子さんは、私のニューヨーク滞在中にすっかり仲良しになったピアニストで、私はしばらく彼女にピアノのレッスンも受けていました。真剣で厳しいと同時に笑いがたくさんの楽しいレッスンで、とても勉強になりました。このCDからは、ピアノ曲ならではの色彩を表現し、聴衆に媚びない真面目な音楽作りをしていることが伝わってきます。