2009年4月10日金曜日

山田詠美「学問」

2008年9月号(この号に水村美苗さんの『日本語が亡びるとき』の一部が載っていたのでたまたま読んだのです)から『新潮』に四回にわたって連載されていた山田詠美の小説「学問」が四月号で完結したのを読みました。連載が始まったときからとても面白いと思って毎回楽しみにしていたのですが、最後まで読んで、とても感動しました。感動なんていう単語を使ってしまうとなんだかばかみたいですが、実にいろいろな感情を呼び起こし、いろいろなことに思いを巡らせてくれると同時に、小説の構成とか文章の技巧にも拍手を送りたくなる作品です。子供期から思春期にはいっていく四人(五人かな)の男女の、複雑で素直で滑稽な感情や行動や関係が、とても優しく描かれています。自分が好きなことや人を発見していく道筋と、恋心や性欲や友情や愛情といったものを、回り道してケガや傷を作りながら少しずつ育んでいく、その過程の物語が、とても愛おしいです。周りに認めてもらったり仲間に入れてもらったりしたい気持ちと、周りへの優越感や競争心がないまぜになった、思春期ならではの心理もとてもよく描けています。私は、登場人物のそれぞれに、自分の一部を見るような気持ちもします。そして、物語の後のそれぞれの人生について読者の想像のかきたてかたが、またとてもよいです。自分の中学・高校時代のいろんなことが思い出されて、気恥ずかしくもなるし、切なくもなるし、その頃の自分に会って「よしよし」と頭をなでてあげたくもなります。また、それからの人生のなかで手に入れたり失ったりしてきたものを、その頃の時間を共有した友達と一緒に、裏山に穴を掘ってしまいに行きたい気持ちにもなります。(私が通った中学・高校にはまさに「裏山」という表現がふさわしいものがあるので、実行しようと思えばできる!)「学問」はそのうち単行本として発売になるでしょうが、興味のあるかたは、図書館で2008月9月号から四回分読んでみてください。