2009年6月19日金曜日

不況下のアメリカの大学の経費削減対策

先週なかばにハワイに戻る予定だったのが、ダラス周辺に大嵐がやってきてフライトがキャンセルになり、テキサス滞在が数日間延長になり、週末にハワイに到着しました。まる4週間テキサスにいたあとでハワイに戻ってくると、自分が普段住んでいる場所であるにもかかわらず、自然・人口の風景から人の種類、車の運転のペースまで、なんだか戸惑うことが多いです。アメリカというのは場所によっていかに多様な国であるかということをあらためて実感します。

我が家に帰ってみると、なんとダイニングテーブルにはきれいなユリの花束が活けてあり、Welcome home, Mari!と書いたカードと一緒においてありました。道向かいに住んでいる仲良しのゲイ友(『ドット・コム・ラヴァーズ』の「マイク」)がわざわざ用意してくれたのです(留守中に緊急事態や用事があるときのためにお互いの家の鍵をもっているのです)。やっぱり持つべきものはゲイ友。テキサスでも刺激的なときを過ごしましたが、ここに帰ってきてよかったなあという気持ちになりました。といっても、その「マイク」自身は、私と入れ替わりに、ミシガンの音楽学校での夏季講習を教えるためにハワイを去ってしまったのですが。

さて、依然として暗い不況のニュースがアメリカでも続いていますが、ハワイでは州知事が赤字削減のため、州の職員1万5600人に今後2年間にわたって月に3日間の無給与「休暇」を言い渡しました。これによって事実上、就職員は13.8%の給与削減となり、州は6億8800万ドルを節約できるということとなります。ハワイ大学も州立大学なので理論的にはこれが適応されるのですが、労働組合の契約により大学および公立学校教員には知事が「休暇」を強制的に与えることはできないので、代わりの経費削減策を大学側が提供することが期待されています。しかし、給与削減なしで現在の経済状況に対応できるほどの経費削減をするためには、かなり大幅な人員削減、つまり各種のプログラムをまるごとカットしなくてはならず、それには当然たいへんな抵抗が予想されます。

そんななかで、今日のニューヨーク・タイムズに、全国各地の大学がどのようにして経費削減にのぞんでいるか、という記事があります。教員のオフィスの電話を取り除くとか、清掃の頻度を減らすとか、新入生のためのオリエンテーション期間を短縮するとか、はてには水泳部の他大学との試合を「ヴァーチャル化」(実際に試合の会場に出かけていくのではなく、それぞれのチームが自分の大学のプールで泳いでタイムを計ってくらべる。それって「試合」なのかしらん?)するなど、やれやれと溜息の出るような策も多いですが、なかにはカットされたもののなかで「今まではそんなことしていたのかいな」と思うようなものもあります。たとえば、ノースカロライナ大学チャペルヒル校(全国の州立大学のなかでも屈指の名門研究大学です)では、新任教員のための州のバスツアーがカットされたとか。不況のさなかに大学教授100人が旅行をしてホテルに泊まるのはよろしくない、とのこと。まあたしかにそりゃそうだろうとも思いますが、でも考えてみれば、大学の教員はたいていまるで違う場所(外国の場合も多い)からやってくるので、とくに地元の学生が多い州立大学に長く腰を下ろして仕事をすることになる教員がその土地の文化を理解するためには、このツアーはなかなかいいアイデアだと思います。ハワイのように、他のどんな場所ともまるで違う文化・社会構成をもった土地では、こうしたツアー、オリエンテーションはかなり有益なんじゃないか、と思います。ふーむ。ディッキンソン大学では、学生のための無料ランドリー・サービスがなくなったとか。学生のための無料ランドリー・サービス???

こうして、不況が、ふだんは知られることのない(あるいは、知られていてもあまり表面に出ない)大学間の格差を明るみに出す、というのも興味深いものです。