今日のニューヨーク・タイムズの記事のなかで読者がもっともたくさん友達などにメールしている記事が、辛口批評で有名なMaureen Dowdによる論説。1972年からアメリカ人の「気分」を追って来た調査によると、1970年代から、アメリカの女性の「幸せ」度は低下してきているのに対して、男性は「幸せ」度が増している、とのデータが出ているそうです。社会階層や子供の有無、民族などにかかわらず(唯一アフリカ系アメリカ人の女性だけは、1972年と比べると今のほうがやや「幸せ」であるものの、アフリカ系アメリカ人の男性と比べるとやはり「幸せ」度が低いそうです)、女性は年齢を重ねるにつれて幸せでなくなるそうです。この説明としては、フェミニズム運動の成果によって、女性は仕事においてより多くの選択肢を手に入れ、エネルギーを注ぎ込む対象も増えたいっぽうで、家事の負担は依然として男性よりも女性のほうが大きく、女性は家庭と仕事の両方においてスーパーウーマンであることを、自分にも周りにも期待される。生活を構成する要素が増えれば増えるほど、それぞれにかけられるエネルギーは減少し、本人の満足度も低下する。また、ホルモンの変化を含む女性の身体の現実もあるいっぽうで、アメリカ文化は若々しい身体美をますます強調するようになり、整形手術などの手段を使ってまで若さを保とうとする女性も増えている。もともと女性は男性にくらべて自分に厳しいことが多いので、期待と選択が増えれば増えるほど、それらを実現しきれない女性は不満度が高まる。それに比べて、男性は、経済的余裕に平行して幸せ度が高まり、また、女性が仕事をするようになって、男性は自分がひとりで家計を支えなければいけないというプレッシャーからも解放されてきている。恋愛においても男性はトシをとってもいろいろと可能性があるのに対して、中高年の女性に世間は厳しい。
「幸せ」かどうかよりも、選択肢があるかどうかのほうが、人間にとっては大事で、仮にそれらの選択肢が結果的に女性を不幸にするとしても、選択肢がないよりは幸せだ、という見方もありますが、とても暗い気分にさせられるデータです。
このデータは、アメリカに限らず、世界のいろいろな国で似たような現象が見られるらしいのですが、私のまったく非科学的な、まったくの個人的な印象によると、これは日本にはあてはまらないように思うのですが、どうでしょうか。世代による差異もあるでしょうが、中高年の日本人を見ていると、男性のほうが女性よりずっと幸せ、という風には見えませんが、どう思いますか?もちろん、「幸せ」観というのはそれぞれの文化に特有のもので、そもそも日本では「幸せである」ということにアメリカほどこだわらないような気もします。