2009年9月17日木曜日

アラン・ギルバート、NYフィル音楽監督デビュー

指揮者のアラン・ギルバート氏が、ローリン・マゼール氏の後任としてニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団の音楽監督としてのポジションに就き、2009−2010年のコンサート・シーズンの幕開けとともにデビューしました。新曲を含む意欲的な演目のコンサートの評がニューヨーク・タイムズに載っています。アラン・ギルバート氏は、現在42歳。両親ともにニューヨーク交響楽団のヴァイオリニストで(父親は既に引退)、母親はアメリカで活躍する日本人音楽家のパイオニアの一人である建部洋子さんです。私は直接インタビューはしなかったのでちらっと言及しているだけですが、『Musicians from a Different Shore』にも出てきます。ニューヨーク・フィルは、アメリカでもっとも歴史と伝統のある交響楽団であり、バーンスタイン監督のもとでは華麗な演奏や『ヤング・ピープルズ・コンサート』などさまざまな画期的な企画を通じてアメリカのクラシック音楽界をリードしたものの、近年では伝統にとらわれすぎて演奏やプログラミングに面白味が欠けるなどとといった批判もありました。また、これまで常任指揮者・音楽監督のポジションに就いてきたのはほとんどがヨーロッパ出身の音楽家でした。そういったなかで、ギルバート氏のような、アメリカ生まれの若手の指揮者がニューヨーク・フィルの音楽監督のポジションにつき、現代曲を含む新しい時代の音楽を創造していくということには、なかなか画期的な意味があると思います。ニューヨーク・フィルは、昨年の北朝鮮での公演に続いて、今秋はキューバで初公演をすることになっています。最近のアメリカのクラシック音楽界では、ロスアンジェルス・フィルハーモニー(これについては『現代アメリカのキーワード 』になかなかいいエントリーがありますので参照してください)がエサ=ペッカ・サロネン氏の後任としてベネズエラ出身のなんと1981年生まれのグスターヴォ・デュダメル氏を音楽監督に任命したことがたいへん話題になりました。ロスアンジェルス・フィルは、いろいろな意味でとても斬新なことをやっていて、おもに映画などのポップ・カルチャーの中心地として考えられているロスの芸術活動に新しいエネルギーを注いでいるのですが、ニューヨーク・フィルやロスアンジェルス・フィルが音楽監督の座をこれらの若者に委ねるというあたりに、アメリカという社会の前向きな姿勢とエネルギーを感じさせられます。