2010年4月17日土曜日

結婚は健康にいいか?

先週のニューヨーク・タイムズ・マガジンに、「結婚は健康にいいか?」という記事があります。19世紀なかばにイギリスでなされた調査以来、ごく全般的に言って、結婚している人のほうが、未婚の人や配偶者と死別した人とくらべて、健康で長生きする、ということが統計的に示されてきました。結婚という形態をとらずに共同生活をする男女や同性愛者、離婚を選択する男女などが多い現代社会においては、19世紀の前提や調査結果をそのまま当てはめるわけにはいかないものの、結婚している人のほうがそうでない人よりも健康である、という全体的な傾向は当たっているそうです。(といっても、結婚と健康に相関関係があるからといって、必ずしも因果関係があるとは言えない、との注記もあります。結婚したから健康を保てる、というよりは、健康な人のほうがそもそも結婚する確率が高い、ということもあるからです。)ただし、そのおおまかな統計をもう少し具体的に見てみようということで、結婚生活の質と健康の相関関係を調べた現代の調査結果が、この記事に述べられています。「まあ、そりゃあそうだろう」と思うようなものが多いのですが、具体的な調査方法や結果は、なかなか興味深いです。

ぶっちゃけた話、結婚生活がうまく行っている人は、未婚者や離婚経験者と比べて確かに健康だけれども、結婚生活に問題がある人は、未婚者と比べて免疫力が低いなどの健康上の問題が見られ、夫婦関係のストレスは身体的な症状となって表れるのが明らか、ということです。そして、それを単にいっときの調査結果(つまり、被験者の健康診断の結果と、自己申告による結婚生活についての満足度の相関関係をみる)だけでなく、時間を追って夫婦関係における葛藤と健康上の数値を調べる、という調査もあるそうです。たとえば、幸せに暮らしている(と思える)新婚男女にチューブをつけてもらい、24時間にわたって、定期的に看護士が採決をしながら、家事、セックス、義理の両親など、問題を引き起こしやすい話題について話し合ってもらう。また別の調査では、夫婦の腕に小さな傷をつけて、愛情深い暖かい会話をするときと、葛藤のある会話をするときで、その後傷が治るまでにかかる時間に差があるかどうかを調べる。よくもまあこんな調査に参加する人たちがいるもんだなあと、それに感心してしまいますが、実際に何十組もの夫婦がこの調査に同意し、出た結果はたいへん明瞭。葛藤の多い会話をした男女は、てきめんに免疫力が低下して、傷が治るのにずっと時間がかかるのだそうです。

だから、結婚生活においては、なにか問題が感じられたら初期のうちにそれを話し合うなりなんなりして解決への努力をするべきで、そうしないと長期的には心臓病や糖尿病など健康上の問題へも発展しがちである。そして、そうした問題に向き合って取り組んでいこうという意思があるのなら、もちろんその努力はするべきであるが、その意思がないのなら、健康上の観点からいえば、結婚生活をやめたほうがよい。(ただし、離婚がもたらす健康上の問題は小さくはなく、その後で新たに幸せな結婚生活をするようになった人でも、離婚で負った健康上の傷は完全には癒えない、ということらしいです。)といっても、どんな夫婦でも多少の言い争いをするのは当たり前で、喧嘩をするか否かということよりも、喧嘩のしかたが問題であり、双方が自分の言い分を主張するときにも、相手を傷つけたり嫌悪感をあらわにするような言い方でなく、相手への愛情や暖かみをもった言い方をすることで、健康上の問題に発展するようなストレスはずっと和らげられる、とのことです。まあ、当たり前と言えばその通りなのですが、こうしたことが実際の数値で結果となってあらわれるというのが、やはり面白いです。