2008年11月29日土曜日

Proposition 8 投票分析

アメリカは木曜日がサンクスギヴィングの休日でした。友達の家でのパーティを2軒はしごして、たくさん七面鳥を食べました。これからクリスマスにかけて本格的なショッピングシーズンですが、不況がどれだけ消費者の財布のひもに影響するのか、注目されるところです。

同性婚を禁じるカリフォルニア州の住民投票Proposition 8が通過したことは前に書きましたが、この件についての投票を分析した論説が今日のニューヨーク・タイムズに載っています。投票した黒人人口の七割がProposition 8を支持、つまり同性婚を禁じる投票をしたことは選挙直後から明らかになっていましたが、さらに明らかになったのは、黒人女性のほうが、黒人男性よりも、Proposition 8を支持する割合がずっと高かった、ということです。この点について論説委員のCharles M. Blow氏は以下のような説明をしています。まず、白人人口と比べて、黒人人口は、定期的に教会に通う割合がずっと高く、また、教会に通う黒人のうち、女性は男性よりずっと多い。黒人は圧倒的に民主党よりで、今回の大統領選では実に95%の黒人がオバマ氏に投票したが、社会道徳観に関しては、教会に通うこれらの黒人はきわめて保守的で、同性婚を初めとする社会問題についての黒人の意見は共和党のものと変わらない。また、さまざまな理由から、黒人女性は、他の女性と比べて、非婚率・離婚率がずっと高い。自らが安定した結婚生活のパートナーをなかなか見つけられない女性たちが、男性たちが他の男性と結婚するということに懐疑的になるのは自然かもしれない。(私はこの議論にはちょっと無理があるような気がします。)

というわけで、同性婚の合法化を提唱する活動家は、黒人人口、とくに黒人女性の支持をとりつける努力をするべきだ、との論旨です。その過程で、同性婚の権利を異人種間結婚(アメリカの多くの州では、20世紀後半にいたるまで、法律上は異人種間の結婚が禁じられていた)にたとえて議論を進めるのは得策ではない。非黒人男性と結婚する黒人女性の割合は、非黒人女性と結婚する黒人男性のほぼ三分の一であることにも見られるように、多くの黒人女性は、黒人が非黒人と結婚することに否定的であるからだ。また、聖書の内容について議論しようとするのも得策ではない。信仰というのは論理で成り立っているものではないからだ。そして、過ぎ去った時代の性的道徳を、現代の性文化に適用することの危険性について、より広い観点から議論するべきだ。とのこと。

同性愛に否定的な黒人人口の態度は、同性婚の合法化のほかにも、深刻な影響があるとBlow氏は指摘しています。同性愛が間違っているとの道徳観のもとで育った黒人のうち、それでも同性愛指向をもつ人は、きわめて危険な性行為に走りがちで、黒人人口におけるH.I.V.の流布に結びつく。実際、H.I.V.に感染した女性のうち、自分の性パートナーがバイセクシュアルであるということを知っていたのは6%で、同じ立場の白人女性の14%という数字の半分以下である、と。

敬虔なキリスト教信者がみな保守的であるわけでもないし、聖書にもとづいた神学的分析と現代の文化や社会問題をめぐる真剣な議論がまったく対立するわけでもないので(私の同僚にも、カトリック神学の学位をもつレズビアンで、宗教とセクシュアリティについての研究や授業をしている、人間としても学者としてもとても立派な女性がいます)、Blow氏の論には100%賛成はしかねますが、こうした論説からは、アメリカにおいて、人種・宗教・セクシュアリティといった軸が、実に複雑に絡み合っていることはよくわかります。