2009年2月12日木曜日

不景気になればデーティング産業が儲かる?

今日(日本時間では昨日)はリンカーンとダーウィンの生誕200周年記念日です。当然ながらアメリカではリンカーンにちなんだ様々な式典が行われ、リンカーンの伝記もたくさん出版されています。さんざん研究しつくされてきたリンカーンのような人物について、今さら新しいことが言えるのかと思いますが、伝記というジャンルはアメリカではとても人気があることもあり(書店では必ず「伝記」というコーナーがあります)、200周年にちなんで山ほど新たな伝記が出ています。私は、雑誌「ニューヨーカー」のコラムニストであるAdam Gopnikによる、Angels and Ages: A Short Book About Darwin, Lincoln, and Modern Lifeという本を読み始めたところです。Adam Gopnikのエッセイは視点が温かく分析力があり、「ニューヨーカー」に載るものはすべてそうであるように、なにしろ文章が素晴らしいので、私はとても好きです。読み終わったらまたコメントします。

今日のニューヨーク・タイムズに、「不景気になればデーティング産業が儲かる」という主旨の記事があります。昨秋以来どの産業も暗い数字ばかりですが、オンライン・デーティングや結婚相談所のような産業は、きわめて健全な収益を上げているそうです。たとえば、『ドット・コム・ラヴァーズ』の読者にはおなじみのmatch.comは現四半期はここ7年間で最大の収益をあげており、他のより料金の高いオンライン・デーティング・サービスも、ここ数カ月で入会が50%もの伸びを示しているとのことです。失業したり仕事が減ったりすると人はコンピューターに向かう時間が増えるので、オンライン・サービスは顧客を増やしがち、という説や、使えるお金が限られているときには無闇に「ブラインド・デーティング」のような形で高い食事に出かけるよりは、体系化された検索ができるオンライン・デーティングのほうが効率的だという説、また、日常生活が厳しいときには人は恋愛という絆やいたわりを求めるようになる、という解釈もあるらしいです。不景気のときは、オンラインの「プロフィール」の中で「仕事」に言及する人の割合が高くなる、とのデータもあるそうです。アメリカのオンライン・デーティングの自己プロフィールに頻出する表現のひとつにsuccessfulという単語があることは『新潮45』1月号217−218頁で説明しましたが、不況期には経済的なことよりもより実質的な人間性に重きが置かれるようになって、よいこともあるとか。なるほど。