この演説については、日本のメディアでもいくらでもコメントが出るでしょうが、日本ではおそらくあまり報道されないであろうもうひとつのニュースが、歴史家ハワード・ジン(Howard Zinn)氏逝去の知らせ。立派なひとが亡くなりました。ハワード・ジン氏は、左派の視点からのアメリカ史を語った『People's History of the United States』がミリオンセラーになった歴史家で、スペルマン・カレッジというアトランタの黒人女子大学で教鞭をとったあと(大学が公民権運動に積極的に参加しないことを公然と批判したことなどを理由に解雇された)、ボストン大学で教授をしながら、ベトナム反戦運動や労働運動などの第一線で運動家としても活動を続けました。People's History of the United Statesは、あまりにも明確な政治的立場から書かれた歴史であるがゆえに、客観性に欠けると批判する歴史家もいるものの、メインストリームの歴史書にはない視点から、新しい形のアメリカ史を提供しているということで、大学の教科書としてもひろく使われ、大きな影響力を与えています。日本語で入門を読みたいひとはこちらの『学校では教えてくれない本当のアメリカの歴史』〈上〉1492~1901年〈下〉1901~2006年をどうぞ。