強制労働の共謀と労働者搾取の容疑で起訴が決まったのは、オアフ島のカポレイという地域で農場を経営するラオス人のSous兄弟。2004年にタイから多額の就職斡旋費を払わされた44人の労働者「輸入」し、虚偽の契約書に署名させ、契約書に定められた額よりも少ない賃金で働かせ、さらにさまざまな費用を賃金から差し引いて(その結果賃金がゼロまたはそれに近くなった労働者もいた)、経営者の指示に従わなければ強制的にタイに帰国させると脅迫した、とのことです。Sous兄弟は、連邦労働省に定められているゲストワーカー・プログラムに基づいてこれらの労働者を呼び寄せたのですが、このプログラムでは、雇用者が労働者の航空費を含む交通費を受け持つこと、また、国の最低賃金を上回る賃金を払うこと、そして、労働者に斡旋費を課すことを禁じることなどが定められています。しかしSous兄弟は、労働者の航空費を出さず、契約書に定められた賃金を支払わず、きわめて劣悪な住環境(貨物用コンテナに窓の穴を開けたものに住まわせられていた労働者もいる)のもとで労働者を強制的に働かせた、とのことです。
Sous兄弟はラオスから移民してきて以来、ハワイの農業に多大な貢献をしてきた「アメリカン・ドリーム」の象徴として、地元の人々の信頼や尊敬を集めてきていただけに、このニュースの衝撃は大きいものとなっています。
これと関連して、先週には、ロスアンジェルスを拠点とする人材派遣会社Global Horizons Manpowerが起訴されることが決まりましたが、これはアメリカ史上最大の人身取引訴訟となるそうです。この会社は、アメリカでよい労働条件のもとで仕事ができると約束してタイから400人の労働者を呼び寄せたのち、労働者のパスポートを取り上げ、雇用契約に違反し、指示に従わない労働者は強制送還すると脅迫した、というもので、Sous兄弟の事件と類似したケースです。
人身取引というと、中国などからだまされて連れてこられた若い女性がニューヨークなどで監禁状態のなかで売春婦として働かされる、というものを連想しがちですが、青空のハワイでこのような事件が起きているという現実には、はっとさせられるものがあります。