さて、まるで関係ないですが、ニューヨーク・タイムズに載っている、Visualizing Slavery、つまり「奴隷制を視覚化する」という記事がなかなか面白く、私は貴重な午前中の時間をかなりこのサイトで遊ぶことに使ってしまいました。米連邦政府が国勢調査で南部の奴隷の数を最後に記録したのが1860年。その数カ月後に、海岸線の調査をする政府機関が、国勢調査のデータをもとに、奴隷の分布を視覚的に示した地図を制作したのですが、ひとくちに南部といっても奴隷の分布はなかなか複雑で、奴隷制と南北戦争の展開とが密接に結びついている(当たり前のようでいて、実際はなかなか複雑)ということがよくわかる。この地図で示されていることが、連邦側の戦略にどのように使われたかということもよくわかるし、この地図自体が奴隷制解放に至る過程で果たした役割も説明されていて、なかなか面白い(この記事に使われている、リンカーンその他を描いた絵の上でカーソルを移動すると絵の細部が見られます。これだけでも私なぞは子供のように喜んでしまう)。なんといっても、こうした視覚資料をニューヨーク・タイムズがネット上でこうした形で使うというのが面白い。
私は最近、さまざまな視覚資料を研究や教育活動のために無料で提供しているARTstorというデータベースがたいへん気に入って(ARTstorのメンバーになっている大学や美術館などに所属している人でないとブラウズできないようです、あしからず)、これまた何時間もこれで遊んで時間を使ってしまうのですが、資料のデジタル化というのは本当にすごいものです。大学院生の頃、図書館でNew York Times Indexという、ニューヨーク・タイムズの過去の記事を各年ごとにすべて項目化した分厚い本を、一冊一冊辛抱強く調べていった頃のことを考えると、リサーチというものの性質がまったく変化したのを実感します。せっかちな性格の私がよくもまああんな地道な作業をやっていたものです。