2010年12月12日日曜日

デジタル時代の雑誌

今日はホノルル・マラソン。去年よりは参加者の数がやや減少したとはいうものの、23,000人弱の人たちが朝5時のスタートを切りました。私はもちろん走りませんが、私のピアノの先生や、オレゴンに住んでいる友達夫婦が、この日のためにせっせとトレーニングをしていて、昨日は一緒にコースの一部を車で走ってチェックしたりもしたので、なんだか私まで興奮・緊張して、夜はよく眠れませんでした(その気になりやすい性格)。なんと日曜だというのに朝の9時から大学で会議があったため、友達をゴールで迎えることができず、会議が始まる前に沿道で応援に行こうと思っても、その時間帯に通るエリアは道路が通行止めになってどう考えてもそこに自分が行き着けない(その先に住んでいる同僚は、通行止めのため会議に来ることができず、車で15分のところに住んでいるにもかかわらずスカイプで会議に参加したという滑稽な事態でした)ので断念。でも、各参加者が10キロごとの地点を何分で通過したということをネットでチェックできるので、ほぼ1時間ごとに彼らの進み具合を確認。初めてのマラソンだというのにかなりいいタイムで完走したことを確認したときには、思わずコンピューターの画面を前にひとりで拍手してしまいました。

というわけで、やはりインターネットというのは便利なものですが、今日のニューヨーク・タイムズに、紙の新聞や雑誌が次々と廃れていくなかで、デジタル化の波にうまく乗ることで大きな赤字を黒字に転じ大幅に収益をあげた『アトランティック』誌についての記事があります。『アトランティック』誌は、153年間も続いている老舗の権威ある知的な雑誌で、『ニューヨーカー』や『ハーパーズ』と同じように、著者にとってはこの雑誌に記事が掲載されればたいへんな名誉だし、読者にとってはこの雑誌に目を通していることが一種の知性の象徴となるような媒体。知的な意味での評判はつねに高かったにもかかわらず、ビジネスとしてはおおいに苦戦し、David Bradley氏が同誌を買い取った1999年に450万ドル落ちた収益がその後の数年間でさらに落ち続けました。たいていの媒体ならそのまま下降を続けて倒産に至るところでしょうが、ここで『アトランティック』の巻き返しに決定的な役割を果たしたのが、ニューヨーク・タイムズ紙からJames Bennettという人物を引き抜き編集者にしたこと。Bennett氏のもとで、『アトランティック』は雑誌という紙の媒体のありかたを大きく考え直し、編集・営業の両方において紙とデジタル部門の垣根をなくし、若い編集者を多数採用した結果、2005年には収益が倍増、そのうちの約半分が広告収入で、広告収入のうちの40%がデジタル広告だそうです。素人にはこの数字の意味はわかりにくいですが、雑誌業界では広告収入の40%がデジタルというのは驚異的な数字らしい。

私も、キンドルを購入して以来、愛読誌の『ニューヨーカー』はキンドルで読んでいます。『ニューヨーカー』は毎号の表紙のデザインも紙質も独特で、紙の形態には愛着があるのですが、紙の雑誌だと、どうしても読まないまま数カ月ぶんが積ん読になってしまうことが多く、読みたいと思う記事でも結局読まないまま雑誌ごとゴミ箱行きになってしまいがち。読んだ記事でも、面白いと思ったものをいちいち切り抜いてファイルするなどというマメなことはめったにしないので、「いつかあのへんで読んだ」といった記事も記憶の彼方にいってしまう。それに対して、キンドルだと、過去の号も空間をとることなく全部アーカイブしておけるし、検索しやすい。といった点で、やはり電子版はとても便利。新聞や雑誌がジャーナリズムや言論活動の場として21世紀に力を発揮しつづけていくためには、良質なコンテンツへのコミットメントを続けると同時に、デジタル媒体の有効な使い方を模索していくことが大事だと、あらためて認識。